FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年11月30日放送

今回のお客様は、尾鷲で鰹節や干物、生節、そしてカラスミなどを作っている大瀬勇商店の4代目、大瀬勇人さんです。
100年以上続くこのお店で、尾鷲の食文化をしっかりと守り続けています。

9月20日は、尾鷲のボラ漁の解禁日でした。
ピンピンの魚を乗せて港へ入ってくる船を毎日、期待して待っていましたが
今年は台風の当たり年。
あまりたくさんのボラが取れなかったようです。
それでも漁師さんたちは、一本釣りにこだわっていいボラを水揚げしてくれました。
そして大瀬さんのお店で、おいしいカラスミ作りが始まりました。

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■一本釣りで揚がったボラの卵巣の卵はピカピカ!

カラスミはボラ(雌)の卵巣を加工したものです。
まずは釣ったボラの首を折って締める。
そしてすぐに卵巣を取り出すんです。
網漁では、網の中で死んでいるボラから卵巣を取り出しますので、釣りと網とでは味に差が出ます。
問題にならないくらい鮮度が違うんです。
一番新鮮で状態の良いのは、生きたまま釣り上げたボラの卵。
卵を取り出した後の親は、塩焼きや味醂干し、あるいは『ボラのへそ』と言われるウスといったものが食べられます。
カラスミの工程は、簡単に言うと卵巣に塩をして干すというもの。
血抜きが大変と言いますが、それは網で獲れたボラ。
釣りのボラは簡単に血抜きできますし、ましてや生きていたら血が回ることがない。
血抜きが大変だというところは、古いボラを使っているんです。
尾鷲は昔から釣りのボラを使っています。
ボラを釣る漁師さんが魚市場に揚げてもらって、それを買っています。
釣ったボラは船の中で生かして、船から揚げる時に、首を折って絞める。
だから鮮度が良い。
9月からボラが揚がりだし、カラスミ作りが始まります。
ボラの最盛期は10月。
しかし今年は台風が多く、動きも遅かったので、やきもきしました。

ボラをやっている人は、けっこう天気を気にするんですよ。
自分らも何月何日にモクセイの花が咲いたとか、彼岸花はちゃんと咲いたかとか、いつカモメが尾鷲の港に来たとか、観天望気をするんです。
果たしてボラがいつまで獲れるかによって、またカラスミの値段も変わって来ます。
11月に入ってボラがどっと獲れたら、カラスミの値も下がってきますし・・・そういったことも考えながら作る訳なんです。
なので、今年の3つの台風は本当に大変でした。


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■鮮度が良いカラスミは飴色になる

鮮度が良いボラを使うとカラスミは、透明な飴色になるんです。
琥珀というか、きれいな色。
ただ、例えば撒き網のボラは血が回って赤くなります。
そんな違いはありますね。
また産地によっても色や卵の形が変わるんです。
なので、卵の形や大きさで、産地がわかることもあります。
これは東京の、これは九州の、これは四国の・・・とか。

カラスミが日本に伝わったのは、長崎が最初と言われています。
その後、尾鷲でも作られるようになりました。
尾鷲のカラスミの特徴・・・やはり、尾鷲の色と形をしていますね。
尾鷲よりももっと南に行くと細長くなるんです。厚みがなくなって・・・これもまあ、一概には言えませんけど。

日本中、どこでも釣りのボラを獲れるとしたら、一級品のカラスミができます。
今年もからすみの季節になり、ボチボチできてきましたよ!


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■良いカツオの見分け方

尾鷲の海は、すばらしい漁場です。
そして、腕のいい漁師さんたちがこの町にはたくさんいます。

毎朝浜で魚を見ていると、いやでも魚の良し悪しはわかるようになります。
特にカツオは傷みの早い魚なので、なるべく良い物を使いたいですが、最近は漁獲量少なくなって来ています。
それでもこの時期は戻り鰹が揚がりまして、これは美味しかったです!
脂は少なかったんですが、『日帰り』で新しかったので本当に美味しかった。
そして本当に新しいカツオは青い色。
青く光るんです。
これはなかなかお目にかかれません。
『ケンケン漁』でも見られるかどうか。
よく、新鮮なカツオは透かしてみると玉虫色に見えると言いますが、あれは違うんです。
もう酸化が始まっている。
本当に新鮮なものは青色なので、一回見てみてください。
ちなみに『日帰り』というのは、その日のうちに出て帰ってくる漁、『ケンケン』は、要はトローリング。船を走らせて釣る漁法です。
スーパーにも『ケンケンカツオ』として売られています。
やはり一番美味しいのは日帰りカツオ。
今回の日帰りカツオは一本釣りなんだけど、沖が近いとすぐに来られます。
これは漁港として豊かな証拠ですね。


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■カツオが揚がると尾鷲がゲンキになる!

尾鷲ではカツオが揚がると、みんなのテンションが揚がるというか、ゲンキになる気がします。
カツオを食べ尽くそうと思ったら、あら炊きで骨の髄まで食べるくらい。
身だけでなくアラもヘソ(心臓)も食べるし。
ヘソは炊くか、湯がいて塩を振って食べるんですよ。
カツオは捨てるところがない。
頭なら目玉も食べるし、肝も食べるし、塩辛も作るし。
三枚に下ろして、髄は炊いて食べて。
カツオの尾は爪楊枝にもなるんですよ。
僕も作っていますよ。
それくらい固いんです。
爪楊枝づくりは尾鷲の文化じゃなくて、大瀬の文化(笑)。
いや、漁師さんも作っていますよ。
カツオは尾鷲にとっても大瀬勇商店にとっても、すごく重要な食材。
先代も先々代もカツオを加工して、暮らしてきました。
当時は頭の余った部分も炊いて、畑にまいて肥料にしたそうです。
煮た汁まで肥料に。
まさに捨てるところがない魚だったんですね。

尾鷲は今、船が完成したり、船も入って来てくれてたりしているので、漁業でやっていこうと頑張っています。
そんな中、僕も何か新しいものに挑戦しようと思い、実は今、マグロのカラスミを作っています。
マグロのカラスミはでかいです!
自分の足の大きさほどもあるんですよ。
今はまだお客様にお出しできる味ではありませんが、これからどんどん美味しくしていくので、期待していて下さい!