FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年12月14日放送

今回のお客様は、尾鷲側の馬越峠の上り口にある『古道の宿 コテージ・ウッドペック』のオーナー、福田晃久さん。
福田さんが経営するウッドペックは、貸し別荘形式の宿です。
夏はバーベキュー、冬は鍋を囲んで団欒の時間をすごすのに、ぴったりの場所。
釣りを楽しむ人、熊野古道を歩くのに訪れた人、家族旅行や尾鷲に帰省された人・・・いろいろな人々が利用しています。
これが福田さんの理想とする宿。
思い通りの宿になってきて、とってもうれしいそうです。

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■『古道の宿 コテージ・ウッドペック』をオープンした理由

高校を卒業して京都の学校へ進学し、その後、東京で働いていました。
バイクが好きだったのでそちら関係の会社に入社したんですが、望みの、直接バイクに触れるバイク部門は無理だとわかり、田舎に帰ろうと思ったんです。

で、田舎にかえって何ができるだろうと1年くらい考えました。

僕が都会にいた頃は、バイクでツーリングに行っても、素晴らしい風景は、2〜3時間も走らないと出会えなかった。
でも尾鷲は、窓を開けるとそんな風景なんです(笑)
じゃあここに何かを構えて、ここに人を呼ぼうと。
それには何が必要かを考えた時に、『遊び』と『食べるところ』と『泊まるところ』があれば、人は集まるかな、と。

そう意気込んで尾鷲に帰って来たものの、人生そんなにうまくはいきません。
バイク屋をベースにして、そういうものをしようと思ったのですが、資金や立地の関係でなかなか実現できず。

焼き鳥屋をしながら、右往左往していたところ、知り合いの別荘が全然使っていないということで、是非借りて宿泊をやってみたいとお願いしたら、先方もぜひやってくれと。
それが現在の『古道の宿 コテージ・ウッドペック』です。
6年前の12月に開業しました。

お客さんがウッドデッキまで来て風景を見た瞬間、
「わ〜っ!」って言うんですよね。
その表情を見ていると、それだけで宿をやっていて良かったなと思います。
そして帰る時に笑顔で「また来ます」と言ってもらえると、嬉しくてこちらもつい、「行ってらっしゃい」と見送っていまいます。


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■トレイルランニングの世界に魅せられて

トレラン(トレイルランニング)の世界を初めて知ったのは、一昨々年。
お客さんが誰もいない夜10時過ぎに、いきなり60リットルくらいのザックを背負ったとてもスリムな若者がやって来たんです。
どこから来たのか訊ねたら、松坂からだと。
何泊かしながらテント泊で来たのかと思ったら、今朝、3時半か4時に出発してきたと言うんです。
松阪から尾鷲まで、90km以上あるんですよ!
これはすごい人だなと話を訊いてみると、山もそうだし熊野古道が大好きで走ったり歩いたりしていて、こっちにもしょっちゅう来ていると。
さらに尾鷲から那智の滝まで1日で行ったこともあると。
こちらから那智といったら、高い峠もあるし・・・本人はあまりスポーツとして自覚していないようでしたが、それがトレイルランニング、要は山を走るということしていた。
そんなスポーツがあり、楽しみ方があるんだなと、そのとき初めて知ったんです。
それがきっかけでその人と知り合ったんですが、その人は伊勢の森でもメインスタッフでコース作りなどを行っているんです。
そうこうして僕も伊勢まで手伝いに行っているうちに、尾鷲でもイベントをやりたいなと考え始めたところ、知り合いでシーカヤックをしている森田君から、尾鷲でトレイルランニングのツアーをやるという話が出てきたんです。
世界的なランナーの鏑木さんが主導で行うということで、僕もすぐに参加させていただいて。
開催したのは熊野古道を使ったツアーで、2回行いました。
実際熊野古道を使ったツアー。
いろいろ問題がありまして2回のツアーで終わってしまったんですけど、これで終わらせないで、将来的にレースや、定期的なツアーができれば良いな、と考えています。


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■Facebookで広がるトレラン仲間の輪

去年、伊勢で開催された『伊勢の森トレイルランニング』に初めて出場したところ、途中経過のタイムを見ると、僕と抜きつ抜かれつのタイムを出していた女性がいました。
その彼女からFacebookで、年末12月31日〜1月2日まで『古道の宿 コテージ・ウッドペック』に宿泊したいとメッセージが来たんです。
で、ウチに宿泊に来る前に、熊野のトレランにも出ると訊いていました。
そのイベントの日、先頭の方に行って写真を撮っていたら、横から「福田さん!」と声をかけられたんです
そうしたら、Facebook上でやり取りしているその女性でした(笑)
ビックリしました!
そんな感じで、最近、Facebookつながりで宿泊してくださる方が増えて来ています。
面白い時代ですね。


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■見捨てられた道をトレイルランニングのコースに!

熊野古道を歩いていると、驚くことがありますよ。
例えば、どうしてこんな山の中の谷間に石垣が残っているんだと。
この石はどこから持って来たの?
自然石もあるんだけど、中にはちゃんと加工されて石積みがされているものもあります。
それが400年以上前の廃村の跡だったり。
他にも、大台ケ原と尾鷲を結んだ『尾鷲道』というのがあるんですね。
周遊路を見ていると『尾鷲辻』という分かれ道があるんです。
昔は尾鷲へ向かう道と大台ケ原へ向かう道がぶつかるところなので『辻』と言われたそうです。
今それは廃道になってしまっていて、登山客もほとんど通らないので登山マップからも削除されています。
ただ、道が全くないかというとそうではなく、僕らも歩きましたけど、しっかり残っていまるんです。
しかし現在は、誰もが安全に歩けるよう整備されていないので、今すぐ皆さんに「行ってよ」とは言えない。
けれど、尾鷲道は信仰の道であって、大台教会に向けての信者の参詣道として尾鷲の林業家・土井さんが造った道なんです。
記録によると、これが再来年で100周年になります。
今は忘れられつつある道ですけど、再来年までに、日の目を浴びてほしいということで、現在、道の整備や標識などを地元の有志で行っています。
整備としては、みなさんが気軽にやって来られる環境づくりが必要だと思っています。
マニアックな場所にマニアックな人だけを連れて行くのとは違い、ある程度の人数のお客さんを連れて行くなら、それなりの安全性と整備をしなければ。
この先何年かかるかわかりませんが、一つでも二つでも、東紀州の良い風景や道、遺産を見せられるようにがんばっていきたいです。

たくさんの有名な登山家も登った道ですから、イベントも開催して、花を咲かせたいですね。