FM三重「ウィークエンドカフェ」2011年2月19日放送

みなさん、るみ子の酒って知ってますか?
三重県伊賀市で作られているお酒です。
作っているのは、もちろんるみ子さんです。
今日は、森喜酒造場の四代目、森喜るみ子さんがゲストです。
漫画家、尾瀬あきらさんとの出会いのきっかけ・・・日本各地の酒蔵を子供を連れて回ったこと・・・。
たくさんのお話を聴かせて頂きました。
るみ子の酒は、お家で作るおかずが一番合うお酒だそうです。
家族でのんびりと会話を楽しみながらるみ子の酒を味わってくださいね。

■るみこさんは杜氏だとか・・・女性では珍しいですね

ええ。
うちは結構ゆるいほうで、蔵への立ち入りは女性でもOKだったんです。
台所を開けるとすぐ蔵だった関係もあったでしょうが、子供の頃から遊び場になっていました。
それでもさすがに、女性が酒造りには参加することはできませんでした。

でも、最盛期は千石(一石=一升瓶100本)作っていたのに、私が大学を出る頃には200石に。
うちは主に大手のメーカーさんの下請けでお酒を作っていたんですが、平成2年に打ち切りになることが決まりまして。
実際どうしようと思っていたところ、父が脳梗塞になって倒れてしまったんです。

当時の私は製薬会社に勤務していたので、一時は廃業も考えましたが、作り手の方が来てくれる間だけでも続けようと思いました。
そうすると逆に手が足りないし人を雇うお金がない・・・というわけでやむを得ず、女人禁制の禁を破って、酒造りの仕事に入ることになったんです。

■『夏子の酒』作者の尾瀬あきらさんとの出会いは・・・?

たまたま知人に進められて読み始めたら、もう止まらなくなりました!
酒造業という日の目の当たらない世界が、その業界に身を置く私が読んでも驚くくらい正確に描かれていて。
また、大手メーカーと地方の酒蔵のジレンマ・・・理解してくれている人がいるという思いに、感動で涙が止まらなくなりました!

ちょうどその頃の自分が、主人公の境遇と一緒で、身につまされて。
酒造りが面白くなってきたのに、先が見えず、やめようかやめないか悩んでいた時期だったんです。
『夏子の酒』は私に、
「真面目に作っていたら、必ず理解を得られる!」
というメッセージをくれたんです!
夜中に読み終わって、興奮のあまり、そのまますぐに尾瀬先生に手紙を書きました。

そうしたら、尾瀬先生がお手紙をくださって、日本各地の酒造を紹介していただきました。

■酒造めぐりで思ったことは?

おかげさまで子供を連れて、方々のお酒の会をまわり、勉強させて頂きました。(笑)

印象に残っているのは、埼玉県の新亀酒造さん。
ここは純米種だけを作り続けている蔵元さんで、基本に忠実なお酒造りをしていました。
新酒・古酒でも冷酒でも燗酒でも、今あるお酒を一番良い状態で飲むにはどうしたらいいのかと、常に考えているのに感銘を受けました。

いろいろな方によく「どんなお酒が作りたいんですか?」と聞かれるんですが、それが実は究極の問題なんです。
それを見つけるために作り続けているといっても過言ではないと思います。

・・・で、私が閃いたのは、『しこたま飲んでも最後まで一升瓶を抱えていたくなるお酒』。
これを作りたいですね!

■るみこさんが目指すお酒造りは?

まず、自分たちが喜んで飲みたいお酒を、お客様に提供することですね。

今、心に留めているのは二つあって、ひとつは『原点回帰』。
昔から伝わっている、伝統的なお酒の姿を取り戻そうと。
天然の酵母を使い、なるべく昔ながらの手法を活かしながらのお酒造りを心がけています。
そしてもうひとつは、『笑える酒造り』。
作業は確かにきついですけど、日々楽しみながら酒造りに取り組みたいです。
辛い辛いと泣きながら造ったお酒を飲んでもらったら、お客さんに失礼ですから!

日本書紀だと思うんですが、帝に献上するためのお酒を造った日本最古の杜氏集団さんも、謡い踊り、楽しみながらお酒造りをしたと書かれているんです。そのほうが良いお酒ができる、と。
やはり昔の人も、同じことを考えたんですね。

私たちが楽しみながら造ったお酒を、手にとってもらえて、楽しく飲んでもらえたら・・・作り手冥利に尽きますね~・・・。