FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年11月22日放送

今回のお客様は、『ちんどん富都路(ととろ)』で活躍する若葉伯童さんと寿美さんご夫妻。
大阪出身のお2人が名張に住んで33年がたちました。
今では、すっかり名張の人。
ご主人の伯童さんの太鼓は手作り。
河内音頭の太鼓打ちとして活躍をされた伯童さんと、現在、江州音頭を師匠の元で勉強し、ちんどんでは、富都路のマドンナ、寿美さん。
寿美さんの太鼓は『ゴロス』という太鼓で4キロもあるそうです。
夏には、オーストリアのウィーン国立歌劇場の舞台にも立ちました。
ちんどんに出会ってから、若葉さん夫妻の人生が大きく変わりました。

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■ちんどんとの出会い

もともと僕は大阪の会社にいたんですが、いつかは定年を迎えわけですね。
50歳くらいの時、「果たして60で定年を迎えたら何をするんだろう」と思いまして。
たまたま10歳から太鼓をしていたこともあり、それ以来『太鼓』がキーワードに。
そして退職する年の4月に、富山で『ちんどんコンクール』があると聞きまして、一回見に行こうと。
妻を誘ったら、「なんでちんどん屋なんかを見に行くの!?」と言われました。
何と言うか「ちんどん屋なんか」と上から目線で見られているような感じがして、行楽がてら無理やり連れ出したんです。
実はちんどん屋は知っていましたが、向こうに行くまで見たこともありませんでした。
初めて見て、音楽をしながら町を歩く様子を見て、「これはただごとではない」とビビッときたんです。
コンクールはプロのちんどん屋さんが30組出場し、トーナメント制で勝ち抜いていくんです。
優勝賞金100万円。
2日で100万円ゲットできる。
これはなんかあるな、と思いつつ見ていたら、企業さんのPRをテーマに与えられている。
最終的には富山のPRをすることになっていました。
結果的には日本で一番大きい大阪のちんどん屋『ちんどん通信社』が優勝。
第2位が長崎の『河内屋』。
帰ってきてネットで『ちんどん通信社』を検索してみると、やっぱり優勝するには理由がありました。
僕が持っていた『ちんどん屋』のイメージと、ものすごいギャップがあったんです。
『ちんどん通信社』には素晴らしい学歴の持ち主がたくさんいました。
自分が子供の頃に母から聞いていた『ちんどん屋』のイメージと全く違ったんです。
僕自身も心を改めまして、コンクール時にたくさん撮った写真とビデオを元に。自分でチンドン太鼓を作ってみました。
幸い太鼓は一つありましたので、趣味が講じて部材を取り付け、作ってしまったんです(笑)


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■ちんどんを始めるきっかけ

縁があって伊賀に『ちんどん富都路』があると知り、話を聞かせてもらいに行ったんですよ。
一回太鼓を叩いてごらんと言われたので、やってみたら、見よう見まねでできたんです。
そしたら、昼から(ちんどんに)行こうと言われまして・・・いきなり夢が叶ってびっくりしましたね。
こんな機会二度とないから、慌てて家に電話して、ビデオを持ってきてもらいました。
そんなことをしていたら、その翌日にも『伊賀の手づくり博』に出ることになりまして。
2日続けて出てから、親方の方から「良かったら一緒にやらないか」と誘われました。
その時には、僕ものめり込みそうな気になっていましたから。

僕は大阪時代に松竹芸能の『若葉トリオ』という師匠について、そこの専属で河内音頭の太鼓を30年ほど叩いていたんです。
サラリーマンになるのが嫌で、高校を出てからバンドマンをしてジャズドラムを叩いていた関係で、けっこうすぐに叩けるようになったんですね。

ちんどん音楽で、いろんな表現をしますが、やはり大切なのは音楽をしっかりすること。
たまたまうちの親方である藤森先生が、数百種類のレパートリーを持っていて、ジャズから童謡、唱歌に至るまでだいたいのことはやってくれるので、それを随時、瞬間瞬間で、臨機応変に変えていくことができます。

『富都路』で活動するようになって7年になりますが、いまや毎日、ちんどんと太鼓が自分のライフサイクルに溶け込んでいます。
自分自身50代の頃から60代になったら何をしようかと思っていたのが、ちんどんと和太鼓でぼちぼち、自分の望んだ生活ができているのかな、と。
さらに、まさか妻が加わってくれるとは思いませんでした。
メンバーは男4人、女性1人いうことで、親方からは『ちんどんのマドンナ』と呼ばれていて愛嬌を振りまいてくれますんで、それが一番売りかなと。

夫婦で三重県でちんどんをしているのは、僕らだけだと思います。
最初に声をかけて一緒にやろうと言ってくれた藤森先生には、とても感謝しています。
この人がいて、今、僕らがちんどん屋をして、自分なりの充実した日々を送らせてもらっているので。


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■寿美さんにとってのちんどん

寿美さん

最初は私はビデオ撮り係だったんです。
1年弱くらいしたときに、ゴロスの太鼓を叩く人にちょっと変わって、と言われて、そこからず〜〜っと。
それまで見る立場だったのですが、出演する方になってみると化粧を濃くするので、変身した気持ちになれることがわかりました。

変身した自分のところにお客さんが来て、「一緒に写真を撮って」と言ってもらえると、優越感というか、スターになった気がして楽しくなってきて(笑)
濃い化粧に、普通は絶対しない、長いつけまつげをするんですよ。
あとは飾りをバッとつけて。
今までの自分ではない自分になれるので、楽しくやらせてもらっています。

特につけまつげはとても長くて、蝶々が飛んでいるようにみえるくらい。
様々なメイクにチャレンジしたいので、様々な色のつけまつげもつけてみるんですけど、やっぱり最初のつけまつげに戻っちゃうんですよね。
しっくりくるというか。

それから、夫婦でいろいろなところを回るのが楽しいですね。
地元でしている時も充実していますが、江州音頭や河内音頭などに呼ばれていくと、世界が広がる感じがします。
普段だったら絶対話せないような人と、お話することができたり。
一般人じゃなくなったみたいなきもちになります(笑)


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■ちんどんを通して、地域に社会に貢献したい!

普段は普通のおっさんで、好きでやっているだけなんですが、ちんどんをしていると、いろんな人から声をかけていただきますね。
敬老会などに呼んでいただくと、そこのおじいちゃん、おばあちゃんがとても喜んでくださって。
これからの高齢化社会に向けて、お年寄り向けの施設で暮らしている方が、懐かしんでくれるのが嬉しいです。
ある方は「60年ぶりにちんどんを見た」と、涙を流して喜んでくれ、私の手を握って離さないんですね。
ちょっとでもちんどんを通じて社会に貢献していきたいですね。
自分自身も楽しいのはもちろん、それを喜んでもらえて、「がんばってちょうだい!」といろいろな声をかけてもらう。
それも全く知らない人から。
そういうのがあり、人の役になっているのかな、と思える自分が嬉しいですね、