第125回『サルシカ隊長レポート』2015年5月

ドライブをしていて、ふと気になるところありますよね。
なのに「近くだから・・・」「また次の機会に・・・」と思ってなかなか行けないところ。
実は灯台下暗しで、思わぬ名スポットであるやも知れない。
というわけで、サルシカ隊長、奥田が、気になっていた灯台下スポットへ突撃〜!!!

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この隊長レポートを書いているワタクシも、カメラを担当している写真師マツバラも、まあ本当に落ち着きなく三重県を北へ南へ、そして西へ東へと動きまわっている。
1週間のうち半分は取材で三重県のどこかへ行っている。
三重県内ウロつきランキングなんてものがあったら、間違いなく写真師マツバラもワタクシもトップランキングなのだ(笑)。

が、そんなワタクシたちでも行ったことがないところがある。
車で前を通り、看板なんぞを目にしながら、

「いったいどんなところなんであろうか」
「帰りに時間があったらちょっと寄ってみるか」

などと思いつつも、なかなかそれが実現できないでいるところ。
みなさんにもあるのではないだろうか。

今回はそんなスポットを訪ねようということで、志摩へと向かった。

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まずは隊長であるワタクシの灯台下スポットから。

伊勢の内宮の近くから伊勢道路へ入り、神宮林に囲まれた道を走る。
志摩路トンネルを抜けると、空が切り開けて明るくなる。
長い坂道をくだる。
すると、神路ダムの湖面が見えてくる。
その手前にあるのが、この看板だ。

「天の岩戸 1.2キロ→」

この道を通った人はほぼ全員、この看板に気づくはずだ。
ワタクシも子供の頃からずっと見ていて記憶に残っていた。
が、実はこの「天の岩戸」に行ったことがないのだ。
その旨を写真師マツバラに告げると、

「え、ホントにぃ!!? 三重県の情報を伝える仕事をしててそれはアカンでしょ〜!! 天照大御神に関連する大切な場所ですよ〜」

などと、背が低いくせに思い切り上から目線で非難したのであった。

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看板に従い、道を折れる。
神路ダムに沿って細い道を走る。
緑がだんだん濃くなる。
道はえんえん続く。

本当にこの前にスポットがあるのか不安になるが、ひるまず突き進んでいただきたい。
対向車が来たらちょっと大変だけれど、そこで挫折しないでもらいたい。

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行き止まりに大きな駐車場がある。
トイレもある。
平日のせいか車は数台しか停まっていなかったが、来ている人はいるようだ。

その駐車場から、目的の「天の岩戸」までは歩いて行くしかない。
看板をみると、徒歩7分程度とある。

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まあ行ってみようではないの。

ワタクシはこの先に何があるのか、写真師マツバラに一切口止めさせて、のんびりと山の参道らしき道を歩いた。

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半分ほどの道のりを歩いたところに鳥居があり、「天の岩戸」と書かれている。
確かにこのあたりで改めて案内をしていただかないと、果たして本当に辿り着くのか、はてさて自分が向かおうとしていたところがどこであったか、と不安になるもんね。
ワタクシの歩んできた道は間違っていなかったと思いつつ脚を進める。

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道の横を清流が流れ、マイナスイオンが立ちこめる。
深呼吸をすると、身体の奥まで神聖な空気が流れ込んでくるようだ。

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清流に手をひたす。

「いいねぇ、こっちむいて」写真師がシャッターを切る。
「隊長、ちょっと手ですくって川の水のんでみようか」

「なんで?」

「うーん、なんとなく!」

そんな写真師の思いつきの指示を無視して、水に濡れた手をマツバラに向けてピッピッとやる。

「あ〜、やめてやめて〜!! ローンが終わっていないカメラが濡れる〜!!」

神聖な場所でワタクシたちは果てしなく愚かなのであった。

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そして出てきたのが禊の滝。
愛知県からやってきた若いカップルが写真を撮っていた。

そもそも、撮影しているワタクシたちを追い抜いて行ったり、戻ってくる人が若い人が多い。
しかもカップル率が高かった。
意外である。

写真師マツバラに聞いたところ、最近ここはパワースポットとして雑誌やネットで紹介されているらしい。

カップルに「なぜここへ来たのか?」「ここにどんなパワーがあると聞いたのか」「二人の関係はいかに!?」「このあと二人はどーするのか」などと詰問したが、答えは「ガイドブックに乗ってたし、ただなんとなく・・・」であった。

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そしていよいよ天の岩戸へと。

ちなみに天の岩戸とは、太陽神である天照大神が隠れ、世界が真っ暗になった岩戸隠れの伝説の舞台である。
実は伊勢二見の夫婦岩で有名な興玉神社にもあるし、日本各地に関連する場所がある。

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拝殿の奥に、清水の流れ出る洞窟があった。
どうやらこれが、天の岩戸のご神体として祀られているようだ。

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この流れ出る清水は、日本の名水百選にもなっている。
ここから満々と水をたたえる神路ダムへと注ぎ、志摩の水瓶として市民の生活を支えているのだ。

地元志摩市からやってきた人たちが水を汲んでいた。
家でコーヒーを煎れたりごはんを炊いたりするのに使うという。

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「来てみてよかった・・・」

これが率直なワタクシの感想である。
特に大きな見どころがあるわけではない。
でも静かな時間と神聖な空気と水が、心を清めてくれる。

みなさんも、志摩へ行った行き帰りに、ちょっと立ち寄ってみてはいかが?


写真/松原 豊