農業と福祉の連携で、農作物の育成から加工まで!
障がい者と地域が笑顔になる就労施設を目指します!
こちらは津市榊原町。
榊原といえば、温泉のイメージですが、田んぼや畑が広がる農業の町でもあります。
今回は榊原町で、『農福連携』の就労持続支援B型事業所『スマイルコーン』を紹介します!
午前9時。
施設利用者のみなさんがゲンキよくやってきたのは、就労支援施設『スマイルコーン』の拠点となっている築100年の古民家。
地域の方の好意でお借りしているそうです。
朝、まず行われるのは、今日の作業を確認するミーティング。
続いて怪我を防ぐためのストレッチ体操です。
『スマイルコーン』理事長の大窪久美子さんに、この施設を立ち上げたきっかけをお聞きしました。
「私には知的障害の娘がいたのですが、6年前に突然亡くなってしまい、喪失感からうつ状態になっていました。
それでも、みんなの元気な笑顔がもう一度見たいと思っていたところ、特別支援学校でお世話になっていた先生から川原田さんを紹介され、お話するうちに障がいを持つ人と農業をしようとなったんです」
川原田憲夫さんは、いちじく農園も経営するベテラン農家で、すでに障がい者の農業による就労体験も行っていました。
「大窪さんが昼に来て、真っ暗になるまで2人で話しました。
『土地を提供するから準備しよう』ということが最初です。
今や農業は作物を作るだけでなく加工まで手を掛けている時代ですから、喜びも2倍だし、中間の間の在庫管理などの仕事も出てきます。
それぞれ組み合わせていけば、良い成果が出ると思いました」
そんな2人の運命的な出会いから誕生した『スマイルコーン』は、今年2月から事業を開始しました。
川原田さんは現在『スマイルコーン』の農業指導にあたっています。
現在、9名の利用者がスマイルコーンで汗を流して農作業しています。
この日はゴマの間の雑草を抜く作業。
暑くて大変そうですね。
「暑いし大変だけど、植えてできた食材が大きくなり、実ができると思うとうれしいです」
と利用者さん。
「2月から作業を始めましたが、よく言われるのは、みなさん表情がすごく豊かになったと。
病院に通っている人も薬の量が減るなど、とても喜ばれています。
最近では近所との付き合いも朗らかですし、家に帰っても楽しく過ごしていると聞きます。こちらとしてもうれしいですね」
と、『スマイルコーン』の川原田育生さん。
今度は川原田さんの農園に移動して、いちじくの収穫。
こちらのいちじくは、川原田農園を代表する自信作。
やはり収穫は楽しいようで、どんなに暑くて疲れても、誰もやめようとしません。
しかし、まだずいぶん実が青いですが、こんなに早く収穫してしまってよいのでしょうか。
実は川原田農園でつくられていたのは、加工用のいちじく。
こちらのビニールハウスでも、大量のいちじくが栽培されていました。
そして加工された商品がこちら!
甘いシロップでじっくり煮込んだ、川原田農園のいちじくのコンポート。
青い実の方が芳醇な香りが出るそうです。
そして作業を終えたみなさんが飲んでいるのは、最近試作をはじめた、どくだみ茶とスギナ茶。
『スマイルコーン』のみなさんは、新しい収益を求めて、こうした野草を使った加工品の開発も進めています。
「中山間地の榊原地区は、リタイヤする農家がこれからポツポツ増えて行きます。その前に何か助けることが一つでも二つでしていく。
地域の人たちから、『偉いね、ご苦労さん』と、心から言ってもらえるような施設にしたいと思っています」
と、川原田さん。
「農業を知らなかった子たちがみんな一生懸命で、むしろ休みをムリにでも取らせようとこちらがコントロールしないといけないくらい、夢中にはまっていくんです。
今は、ここを将来古民家レストランに変えて、地域の拠点するのが一番の夢です。
お客さんが自分でミント取ったり、ハーブ取ったりして自分の料理を一緒に作ることができるような場所にしたいです」
と、大窪さん。
農業と福祉の連携。
その可能性に期待が寄せられる一方で、克服すべき課題が多いのも現実です。
未来へ向けて種を植える。
『スマイルコーン』の取り組みはいまはじまったばかりです。