FM三重『ウィークエンドカフェ』2015年8月15日放送

今回のお客様は、『利休饅頭』でお馴染み、伊勢『藤屋窓月堂』の専務、吉尾雄介さんです。
和菓子職人となって4年。
朝8時からおまんじゅうを作り始め、夏のこの季節には涼しさを感じてもらえるようなお菓子を、お客様にお届けしています。
かっこいい仕事がしたいな。
そう思っていた吉尾さんの目に飛び込んできたのが、和菓子職人さんの姿でした。

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■季節を知らせるのが和菓子屋の役目

和菓子は赤や緑、黄色などの色のバランスが大切だと思います。
色だけで季節感を表せるところに、和菓子の奥深さを感じます。
和菓子を見れば、今の季節がわかります。
その季節が来るちょっと前に和菓子を用意して、みなさんにお知らせするのが和菓子屋の努めかな、と。
日本文化について毎月勉強しますが、次の月には忘れているので、毎回勉強する感じですね(笑)
お茶会などに使う上生菓子は毎月新しいものを使うので、本物に近く色づけする方法や、菓子の持つ意味を考えながら作っています。
今、店頭に並んでいるお菓子は、桔梗、ひまわり、夏ごろもという梅あんに涼しげな寒天。
それからおはらい町にある本店では、利休氷もお出ししています。

 

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■きっかけは大学時代の和菓子店でのアルバイト

僕は実は生まれも育ちも千葉県。
大学生の時に就職活動をしたくなく、和菓子屋をしている叔父のもとでアルバイトを始めました。
その時、職人さんの手つきを見てカッコいいなと思ったのが、頭の中にずっと残っていて。
カッコいい仕事をしたいという思いから、和菓子職人になろうとおもったのがきっかけでした。

それから専門学校に2年間通い、その後すぐに『藤屋窓月堂』に入れてもらい、今が4年目。
まだ全然わけもわからず突き進んでいますね。
和菓子の専門学校では基本の生地や餡とかを教えてもらいました。
学生時代は正直あまり勉強していなくて、「学校に行ったからいいじゃん」と軽く考えていました。
なので、お店に入ってからが苦労の連続です。
もっとちゃんと勉強しておけば良かったと、今は思っています。

一番難しいのは、おそらく餡を炊くこと。
季節や温度、天気によっても違うだろうし、本当に同じ味を目指そうとすると毎日やりこんでいく必要があると思います。
特にここは老舗なので、お客さんも舌が肥えています。
時々お客さんから味についての指摘があったりすると、しまったと思います。

 

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■老舗が多い伊勢では変わらない味を求めている人が多い

周りが老舗ばかりで変わらない味を食べ続けている人が多いので、どういう展開をしたら良いのか、毎日考えています。
名物の『利休饅頭』は町の人が自分で買って食べるのではなく、お使い物やお届け物に使う商品のようですね。
こっちに来てから4年になりますが、「利休饅頭は家によくあるよ」という話を聞きますが、みなさん、自分で買ったものではないと。
ご近所さん同士で贈り合うのが、伊勢なんでしょうかね。

伊勢に来て驚いたのは、みんなフレンドリーなこと。
知らない人が話しかけてきたり、バスを待っている間にも知らないおばちゃんが話しかけてきて、ずっとしゃべっていたり。
それが本当に伊勢の良い所だと、今は感じています。

『常若』というミルク饅頭を考案して作らせてもらい、ゴールデンウィークから販売させてもらっています。
三重県産のものを使っていこうと企画して、自分でも納得している出来なので、いろんな方に食べて欲しいですね。
『常若』に関しては、博多の『とおりもん』というお菓子を参考に、しっとりしたミルク饅頭を作りたい、新しい伊勢の銘菓になってもらえたらな、との思いで作りました。
名前は慌てて付けたのですが、今はしっくり来ているので、これから自分がやっていく上で良い名前を付けたと思っています。

 

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■遷宮、サミット、菓子博覧会と伊勢はイベント続き!

伊勢に来た時は、祭りの多いことにびっくりしました。
まず、神宮さん関係の祭りが多いです。
僕が来た翌年に遷宮があり、それにまつわる行事がたくさんありましたので。
町の人たちがみんな仲良く、そんな中に入れてもらえたのがうれしかったです。

特にこの数年は、20年の中でも濃い4年間ではないでしょうか。
遷宮が終わったと思ったら、次は伊勢志摩サミット、その後には全国の菓子博覧会が伊勢で行われます。

正直サミットに関してはできることが思いつきませんが、菓子博はすでに準備段階から参加させてもらっているのと、三重にはお菓子屋さんが多く実力がある人もたくさんあるのでとても楽しみです。
お菓子は平和の象徴であり、日本のお菓子は世界一のクオリティだと思うので、世界から注目されるイベントが伊勢で行われるのは凄いことだと思っています。

 

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■『第27回 全菓子博覧会・三重』に向けて

今、とても興味あるのは、後は工芸菓子という本物そっくりに作る細工菓子。
平成29年に開催される『第27回 全国菓子博覧会・三重』で15m四方くらいの大きなお菓子を作るので、この2年間はそれを教えてもらうのにかかりきりになるのではないでしょうか。
相当大きい物を作ることになると思います。
そのお菓子が菓子博のメインになるので、三重のお菓子屋さんみんなが協力する必要があるんです。
ぜひ、みなさんに出てきてほしいなと思います。
博覧会に向けて、ようやく最近伊勢支部も集まっているのですが、「どうするどうする、どこで作るの?」みたいな。
まだ全然走りはじめたばかり。
伊勢のいろんな職人さんが集まってできるせっかくの機会なので、大切にやっていきたいと思います。