FM三重『ウィークエンドカフェ』2015年9月5日放送

尾鷲、熊野、紀北の東紀州地域に6店舗ある『主婦の店』。
赤い字のお店のロゴは、この地域に住むみなさんにとってはおなじみですね。
今回は、『株式会社主婦の店』、代表取締役の北裏大さんがお客様です。
ちなみに尾鷲にある創業140年以上の老舗のお菓子屋さん、『かし熊(かしくま)』の4代目でもあります。
初代がせんべい、2代目がようかん、3代目が最中とそれぞれ人気の商品を作り、4代目の北裏さんが考案したのが『おわせのあめ玉』。
こちらも大人気の商品になっています。

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■安心安全・良質スーパー

今、規制が進んでいる『トランス脂肪酸』を多く含む食品に、マーガリンがあります。

『主婦の店』では、マーガリンの特売を5年前から一切行っていません。
売り場を見てもらうとわかりますが、マーガリン・バター売り場で、普通のお店ならば一番売れる場所にはマーガリンが置いてあり、バターは少し高いので、少し上の方に品揃えします。
ウチは逆です。
バターがメインの場所に置いてあり、マーガリンも売らないというわけにはいかないので、品揃えとしては置いています。
しかし、大量に売らないし、オススメもしません。
基本的には安心安全、健康志向。
尾鷲のような小さな街だと、それに特化するわけにはいかないので、オールマイティーな品揃えをしています。
店作りのコンセプトは『良質スーパーマーケット』。
『高質』にすると、少し高くなっちゃうので、あくまでも『良質』がコンセプトなんです。

 

■スーパーにいたる道はお菓子屋・炭焼き・アイスクリーム販売

お菓子業界って、暑い夏場は売れないんです。
売れるのは涼しくなってから。
なので菓子店『かし熊』をやりながら、大昔は夏場に炭焼きをやっていたそうなんです。
たくさんいる職人さんも夏は暇なので、山に行って木を切って炭を焼いて・・・二毛作ですね。
時代が変わり、炭が売れなくなったあとに考えたのが、アイスクリーム。
これも夏場対策ですね。
それとは別に、先々代の二代目である私のおじいさんが、菓子業界に未来がないので、なんとかしないと、と考えたんです。
それがだいたい昭和33年頃なんですが、アメリカではスーパーマーケットが流行っている知ったんですね
当時は『掛け売り』というのがあって、つまり盆と暮れしかお金を払ってくれない。
いわゆるツケです。
けれどスーパーマーケットは現金で売るらしいと。それはスゴイと。
そこでうちの店と、何名かの商店街の方々と共同で始めたのが『主婦の店』の前身なんです。

 

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■全国各地にあった『主婦の店』チェーンに参加!

『主婦の店』の名前の由来。
60年ほど前、まだ私も生まれていない頃の話ですが、コンサルティングの吉田先生という人がいたそうです。
その人が全国をまわってアメリカのスーパーマーケットについて紹介し、私の祖父も含め、岐阜や和歌山など、全国各地で誕生しました。
しかし『スーパーマーケット』という言葉がお客さんには馴染みがないので、吉田先生が意訳をして『主婦の店』という名を付けたのです。
その後、『主婦の店』がスーパーマーケットの代名詞となり、全国各地、その名前で営業が始まったんですね。
ダイエー(現イオン)も、もともとは『主婦の店ダイエー』、岐阜のバローは、『主婦の店バロー』、そして和歌山の『主婦の店』がオークワでした。

そのうち、吉田先生が手がけた店だけでなく、まったく関係ないスーパーマーケットまで『主婦の店』と名乗るようになりました。
つまり『主婦の店』は固有名詞ではなく、一般的なスーパーを表す普通名詞となっていたようなんです。
吉田先生は、すごい人だったのか抜けていたのかわかりませんが、商標登録をしておらず、使用料もいっさい取らない人だったそうです。
これからはスーパーマーケットだと、全国の若い商店主に説いて回った人なので、なので、作ったら良く出来たと喜んでくれるような先生だったんですね。

私は東京で働いていて、父が病気になったためこちらに帰って来ました。
その時正直、『主婦の店』というのはあまりにも古臭い名前だな、と思いました。

帰って来てはじめに、このダサい『主婦の店』をなんとかしたいと思い、さっそく友人のデザイナーに相談しました。
当時コーポレートアイデンティティ・・・デザインをしてロゴマークを作りデザイン料を払うことが流行っていたのですよ。
『〜マート』とか『〜ショップ』とか、かっこいい名前を考えてよとお願いしたところ、「もうそんな良い名はない!」と即答されました。
そして今までこの名前でやって来たのなら、あえて変えないほうが古く新しいイメージになるよね、と言われたのです。
さらに当時流行りだしていたテレビゲームの『任天堂』、オシャレなイメージの『資生堂』、スーパーマーケットの『イトーヨーカ堂』も漢字だと。
だから『主婦の店』もそのままで良いのではないか、と友人に説得され、ロゴマークをローマ字にすれば古臭さを感じなくなるからと、ロゴのデザインをお願いしました
結局『主婦の店』のままであれば、看板の書き換えやハンコの作り変えなど、経費もあまりかからないので、ここまでそれで来ちゃいました(笑)。

 

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■スーパーはライフラインの1つ

震災以降、スーパーマーケットはライフラインの1つだという考えがあります。
今までそんなに意識していなかったのですが、3年ほど前に熊野を含む紀伊半島で、すごい豪雨がありましたよね。
ウチは本部が尾鷲で、生産もそこで行っていたんですが、当時はまだ高速が繋がっていなかったんです。
尾鷲店は幸い水害に合わなかったので、地元のパートナーさんたちが集まってくれて、地元の社員だけでお店を開けたところ、すごい人だったそうです。
レジにも何十人も並んだそうですが、文句を言う人は1人もいませんでした。
水もなんとか午前中に到着しました。
お水があればご飯を炊いたりできるので、ありがたかったです。
けっこう長い間断水していたので、1週間以上、毎日1トンくらいの水を給水車で運びました。
気が付くと我々がライフラインを支えているんだという、自負が出てきたりしてね。

今までライフラインというと電気・ガス・水道、それから交通機関と思っていましたが、意外とスーパーマーケットもライフラインになるのかな、と。
しかしスーパーマーケットはジャストインタイムなので、実際、お店にはあまり備蓄がないのです。
そこで実は今、当社と『ぎゅーとら』さんと『マルヤス』さんのCGCグループで鈴鹿に倉庫を借り、共同備蓄を行っています。
倉庫は共同で、商品は各社のものを置いていまして、ウチはお水とレトルトご飯。
水は年1回、ご飯は日付管理がありますので、年に3回、商品の入れ替えを行っています。
入れ替えを行った後は、期限の短い商品をお店に持って行き、お安く販売しています。
お客さんにも喜んでもらえるので、助かりますね。

 

■地域に密着したスーパーを目指して

『主婦の店』の魚売り場は紀伊長島、尾鷲、勝浦からの市場から新鮮な魚が運ばれてきますが、お店によって売っている商品がまったく違います。
紀北町では定番売り場にマンボウが置かれ、熊野では定番としてイルカが売られています。
尾鷲ではイルカはさすがに見ないし買わないと思います。
試しに逆をやってみたんですけど、やっぱりダメでした。

実は秋刀魚寿司も少し違っていまして、細かく言うと背開き腹開きもあるんですが、大きな特徴は、熊野では頭が付いていないとダメなんです。
逆に尾鷲は頭が付いているとダメ。
お惣菜は、熊野の名物は秋刀魚寿司とめはり寿司で、尾鷲は押し鮨ですね。
けれど、押し鮨は熊野に持って行っても売れるんです。
尾鷲から嫁いだ人が多くいるので、懐かしいそうなんです。
そういう意味では『三大お寿司』は根強い人気があります。

それから、夏の一番人気は、やはりなんといっても『くき漬』と、熊野の『高菜』。
しかし最近では農家さんが減っているようで、年々生産量が少なくなってきているような気がします。
今、幻になってしまったのは、尾鷲だけで採れる『はばのり』。
海藻の一種で、パリパリに乾燥させて。
黒っぽい・・・あれももう、幻の商品です。
たまに入荷すると、あっという間に売り切れてしまいます。
これは冬、お正月前後ですね。

それから僕は毎年アメリカのスーパーマーケットに行って、視察を行っています。
いろんなところに目を向けて、私たちにおいしくて、おもしろい商品を仕入れたいんです。
また、東京の成城石井の商品も扱うようになりました。
地域に密着しつつも、品揃えを豊富に。
食卓を明るくしてくれる商品を、これからもお届けします!