第145回『サルシカ隊長レポート』2015年10月

古い蒸気機関車が展示され、時に子どもたちの格好の遊び場になっている公園がある。
あ、私も××公園で遊んだことある!って方は多いのではないであろうか。
私もそのひとり。
津駅近くの偕楽公園に置かれている蒸気機関車でよく遊んだ。
運転手になった気分で、小さな窓から線路なき前方を眺め、吹き上げる煙と車輪が動き出す音を想像してコーフンしたものだ。
県内には、蒸気機関車を展示している公園(無料で入れるところ限定)が6ヶ所あるという。
そのすべてを回ろう!!
そんな思いつきの旅に写真師マツバラと出かけた。

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玉城町から下道を通って松阪へ。

松阪の中部台運動公園へは思ったより早く着いた。
午後2時すぎ。
あとは、ここと津の偕楽公園を残すだけである。
なんとか日暮れまでに、公園に眠るすべての蒸気機関車を見てまわれそうである。

が、ここで思わぬ事態が!!!

 

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公園がやたらに広い。機関車がどこだかわからない。

松阪の中部台運動公園は、とてつもなく広かった。
広大な芝生公園のほか、流水プール、ソフトボール場、テニスコート、野球場、アリーナ、サイクリングコース、天体観測施設、アスレチックコース、そして「みえこどもの城」という子どもたちのための施設まである。

園内の道をぐるぐる車で走るが、蒸気機関車は見当たらない。
5分、10分・・・。
どんどん時間だけが経過する。

写真師マツバラにウンコまで我慢させて急いできたのに、ここで痛恨のロスタイム!
時間はもう2時半になろうとしていた。
焦る。

 

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ようやく蒸気機関車を発見!

蒸気機関車は、中部台運動公園の第二駐車場にあった。
立派な屋根がかけられている。

 

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機関車の雄姿に見惚れる少年。

これこそ、写真師マツバラとワタクシがみたかった光景であった。
やはり蒸気機関車は少年の夢を載せて走る乗り物なのだ。

煙を吐きながら走る汽車を、少年は走って追いかけなくてはいけない。
その走る道は田んぼの畦道でなければ行けない。
なぜ少年はアミを持ち麦わら帽子をかぶっていなくてはいけない。
当然服は白いランニングシャツである。

 

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亀山、玉城に続き3台目のC58型。

このC58型51号は、昭和14年1月に川崎車両で製造。
同年、奈良機関区に配属され、昭和19年に王寺機関区へ。
昭和30年に再び奈良機関区に戻り、その後、昭和37年4月より亀山機関区。
昭和46年、亀山機関区でカマの火を落とす。
総走行距離1,578,949メートル。
地球をおよそ40周したことになる。

愛称は「くろすけ」。
公園に移設された際、市民のみんなにつけてもらった。

 

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人びとの熱い思いが蒸気機関車を生まれ変わらせる!

私たちがお邪魔したそのとき、ひとりの男性が黙々と作業をしていた。
バーナーでボディを焼き、厚く塗り込められた塗装を剥がしていた。
少しずつ、少しずつ。
根気のいる作業である。

話を聞いてみると、ボランティアで「くろすけ」の補修を続けている保存活動グループ「くーべる」のメンバーのひとりだという。
鉄道好きが高じてこのボランティアに参加するようになった。
いつもは数名で作業しているのだが、きょうはたまたまこの方ひとりであった。

>>保存活動グループ「くーべる」のHPへ

 

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今にも動き出しそうな、県内最高の保存状態。

一度はペンキが塗られた可動部も、そのすべてが剥がされ、油の染みこんだ金属がみえる。
他の機関者も現役時代はこんな感じであったのだ。

油の匂いは、まさに機関車が生きている証。
今にもギイイイイイと重い音を響かせて車輪が動き出しそうだ。

 

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残念ながら、柵があって中へは入れないが、機関室のところに橋がかけられていて、中が覗けるようになっている。

可動部は極力、動かせるようにしてあるようだ。
パーツのひとつひとつが美しく浮かんでいる。

イベント時に、汽笛を鳴らすこともできるようだ。
ただし、かなりの迫力のため、近隣への許可がいるため、そうそう頻繁にはないらしい。

 

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くろすけは動くとの噂もあり

本当かどうかはわからないが、「くろすけは実際に走ることができるのだ」という人もいる。
そうだとしたら楽しいなあ。
素敵だなあ。
保存維持しているみんなの夢を乗せて、まさに出発進行だ。

午後3時を回ってしまっている。
最後の蒸気機関車を見にいこう。

「また、くるね」

くろすけに声をかえつつ、公園をあとにした。

 

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写真/松原豊