FM三重『ウィークエンドカフェ』2015年11月21日放送

今回のお客様は『おわせふるさとガイドの会』、会長の松井勝嘉さん。
尾鷲の案内人として、松井さんは訪れる人にたくさんの事を教えてくれます。
熊野古道のこと、町並みのこと、細い路地のお話まで
大きなショッピングモールはないけれど、宝物がいっぱいある尾鷲の町です。

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鷲は自然のまち

尾鷲は、海も山も川も含めて自然の町です。
自然とは何もないという感覚でこれまできたのですが、自然くらい大地の役割をしているものはありません。
そこから人々の生活が生まれ、民族的なものも生まれ、歴史が生まれ、文化が生まれました。
観光というのは、ただモノを見せたり、お客さんに来てもらってお金を落としてもらうということではなく、自然や文化を含めて成り立つのものだと、ガイドをしながら思っています。
今、町歩きが流行っていますが、尾鷲は町中も面白いし、海側も面白いし、熊野古道もあるし、歩くところがいっぱいです。
また、自然というのは変化するから面白いのです。
今はコスモスが咲いていますが、この間まではさるすべりの花が咲いていたとか。
6月頃はタイザンボクに、春は桜・・・本当にうまく循環していま。
その自然の移り変わりによって、心に文化的なものが生まれてくる。
情操教育という点では、豊富な宝物を持っている地域だと、近頃特に感じます。

 

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の溝を見れば昔の尾鷲がわかる

昔の尾鷲の地形の原形がどうなっていたのかを調べています。
川は高いところから低いところに流れるでしょう。
尾鷲だと山から海に流れています。
昔はいくつもの小さな川が流れていたのですが、地上げをしたり、開拓して町を作ったりするようになりました。
すると街道ができますよね。
街道ができて、その両側に縁ができますね。
これまでは縦に流れていた排水を横に通さないとよくないと、石畳を横切る排水路の『洗い越し』が作られました。
中を覗くことはめったに出来ないのですが、あるボランティアで、蚊が発生するのを防ぐために溝を剥ぎながら、いろいろしている時に、ここは新たに町ができ、街道が築かれた場所だと気づいたんです。
高いところから低いところに流れていた水が、上手に処理されているなと。

この町はなぜギザギザな町なのか、コの字のような形をしているのか・・・そんなことを考えながら歩いていると面白いですよ。

 

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ができると昔の集落がなくなってしまう

昔のコースは海が多く、熊野古道だけが陸路でした。
これも山や坂が多く、車が通れない。
人は歩くには峠を下って平地に来て、次に峠にまた登っていくという繰り返し。
その中間がいわゆる『町場』として発展してきたんですね。
その後、大八車が通れるようにと、岬回りの平らな道ができてきます。
それができたのが明治時代。
それまでは厳しい山道や街道をまわったんです。
大正時代に入ると、また大正の道というのができているんですね。
新たに工事するのは大変ですから、古い昔の道を合流させて。
ところがその後、昭和に入り鉄道ができました。
野原だったところに駅ができると、その周りがどんどん栄えていったんです。
その後、国道42号線ができると、またそちらに人が寄って行くと。
道の性格というのか、この辺りは南北に通る道ばかりなんです。
海があって山なので、どうしても南北の道になってしまう。
そうすると、昔の集落が分断されてしまうんですよ。
二分割三分割に。
昔はここらへんは1つの集落だったのに、今は分断されて、建物の向きまで変わっているところがあります。
これは残念ですね。

 

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客様の顔を見ながらガイドを

昔の観光客は、バスで来るパックツアーが多かったんですね。
私がガイドを始めたおよそ20年前は1日1000人くらい来ました。
最近は高速道路が伸びて都会から来るのにアクセスが良くなったためか、バスで来るのではなく、自家用車で来るお客さんが増えました。
観光会社のパックツアーで来る人もいるにはいますが、数はかなり減りましたね。
個人客、しかも若い世代がどんどん来ます。
歩くのも流行っていますし、歴史や文化を感じられるとさらに楽しいと思いますよ。
そういう意味ではガイドする側も歴史や自然、文化について豊富に知っている必要がある時代ですね。
お客さんが特に要求しなくても、話のついでにそれが入っていくようなガイドの仕方をし、そしてまた自分が勉強して対応していかないといけないですね。
お客さんが何を求めているかわからないですか。
戦国武将を求めているのかもしれないし、古民家を求めているのかもしれないし、自然を楽しみたいという人もいるし・・・。
最初に「こういう話をしてください」と言われることはありませんが、町を歩いているうちに質問が出てくるので、そこからお客さんが何を求めているのかを悟って、興味のある情報を提供していく。
お客さんの顔を見ながら、その心理を探るのが面白いんです(笑)

尾鷲の歴史や文化で、表に出していないものがまだ随分あります。
いつか、ガイド資料をまとめて発表したいと思っていますが、まだ蓄積中です。
まだ未完成なので、間違いがあるかもしれません。
その手直しもしながら、まとめていきたいと思います。