FM三重『ウィークエンドカフェ』2015年12月5日放送

今回のお客様は、菰野町にある自家製ハム、ソーセージのお店、『角屋グロッケンベルグ』の伊藤裕司さん、そのよさんご夫妻です。
昭和5年に創業された『角屋』は、ご主人が三代目。
創業当時は鶏肉、二代目が豚肉、牛肉の販売を始め、手作りのお惣菜やハム、ソーセージを手掛けるようになったのは三代目の裕司さんから。
心を込めて作られた商品がお店のショーケースに並びます。
国際コンテストで数多くの金賞を受賞した角屋のハムやソーセージは、こだわりがいっぱい詰まっています。
素材となる豚は菰野の自然の中で育てられ、本場ドイツの製法で作られます。
多くのお客様から愛された角屋自慢のハム、ソーセージです。

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ム、ソーセージ作りのきっかけ

 1995年1月から製造を始めまして、3月に免許をもらい、本格的なドイツ製法に基づく、ハム・ソーセージ・ベーコン作りを始めました。
学生時代にイギリスに数ヶ月間にて、その時に食べたハムやソーセージの味が忘れられず、そして商社に勤めていたサラリーマン時代に、出張で海外に行った際食べたハムなどがとても美味しかったのです。
なぜ海外で食べると美味しいのに、日本のものは・・・と思ったんですね。
自分が『角屋』を継いでから、食品関係の機械の展示会があり、そこでデモンストレーションで作っていた『ヴァイスブルスト』という白いウインナが、本当に美味しかったんです。
向こうで食べたのと同じ味の、これを販売したいと。
その機械メーカーの営業マンに聞いたところ、製品を売っているのではなく、機械を売っているのですと言われてしまいました。
一旦諦めたのですが、同じ展示会で、スパイスの販売代理店のデモンストレーションがあり、そこでウインナーを食べたところ、やはり美味しかった。
なんとかこれを仕入れることができないかと訊ねたところ、機械を用意したら作り方を教えてくれると、スパイス代理店の社長さんに言われました。
その社長さんが3ヶ月間菰野まで来てくれ、みっちりと私に作り方を教えてくれたんです。

 

行錯誤の連続から世界へチャレンジ

 コンテストに出るまでは試行錯誤の連続でしたし、失敗から学ぶことが多かった。
それから、なんといってもお客さまに恵まれたのが大きいです。
美味しいとものに対しては、非常に高い評価をしてくださるお客さまが多く、少しぐらい値段が高くても美味しくて安全なものが食べたいと言ってくれます。
防腐剤や合成保存料・着色料など使っていない本物の味だと言ってくれるお客さまが多くいます。
そんなお客さまたちに恵まれて、今日があると思っています。

 そうですね。
結婚して後を継ぐまでは、包丁を持っている姿も見たことがありませんでした。
それが、スモークハウスのような機械を動かしたり、肉をさばいたり・・・。
しかもそれを一回ではなく、継続して何年も何年も作り続けているのが、本当に大変なので、よく頑張ってくれていると思います。

 コンテストにチャレンジしようと思ったきっかけ・・・自分の製品がお客さまに支持されているということは、この店でわかっていました。
そんな時、前述したスパイス代理店の社長さんから、3年に1回オランダで開催されるコンテストがあるから出展しませんかとお話があったんです。
私はまだまだだと二の足を踏んだのですが、そこで社長さんが、金銀銅、いずれかのメダルが取れれば嬉しいことだし、ダメでも何がダメだったのかを評価してくれるよと。
悪いところを教えてくれるのなら、それも勉強になるからと出展したところ、ラッキーなことに3品が、すべて金メダルを取ったんです。
それで、自分の作っている商品が、世界に出しても引けを取らないという自信がつきました。
ちゃんとした主原料をきっちりとしたレシピに基づき、さらに試行錯誤して作り上げた製造方法で作れば、間違いない商品が出来たという証というか、客観的に証明されたということ。
他の製品も含めて邁進できると思いました。
ウチが使っているのはドイツのスパイスとドイツの岩塩。
そして、鈴鹿山麓クリーンポークという地元の菰野豚を使っています。

また、商品としては、生ウインナもおすすめです。
こちらはボイルするだけ。
しかもグツグツ沸騰させるのではなく、羊腸に詰めたウインナを熱湯の中へ入れます。
火は止めたままフタをして15分間置くだけで良いです。
それで中まで火が通って真っ白になります。
そのまま出来たものを何も付けずにかぶりつくと、肉汁と風味が口の中に広がります。
そしてできたてにはビールを飲んでいただくと、至福の喜びになると思います(笑)

 

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子さん夫妻は良い意味でのライバル

 金賞を受賞するには200もの項目をクリアしなくてはいけません。
1つでも欠けると銀賞になります。
味、色合い、形。
どれもがパーフェクトでゴールドメダル。
もしシルバーだったとしても何が悪かったかはっきりわかります。
自分のところの製品のどこが悪いか、どこを直せば製品が良くなるのかを教えてもらえる指標になるので、非常にためになります。

 よくやりましたよね。
素晴らしいです。

 妻からは尻を叩かれています(笑)
いつも横にいて、無言で元気づけてくれるので、ありがたいと思っています。
妻は東京出身、三姉妹の長女です。
東京にいた時は、サラリーマンの妻になったつもりだったと思うのに、私の父が病気になり、菰野に帰りたいと言った時、付いて行くと言ってくれました。
当時は息子が生まれていて、娘がまだお腹の中。
そんな状態でも付いて来てくれたので、非常に感謝していますし、いまだに頭が上がりません。
そうでしょ?

 亭主関白で・・・(笑)

 いやいや、それはないでしょ。
で、その時にいた息子が、今は後を継いでくれて、製造もほとんど私の代わりに務めてくれています。
息子とその妻が一生懸命やってくれていますので、我々夫婦も若夫婦に負けないように、いい意味でのライバル心を持ちながらやっていきたいですね。

息子はドイツに1年近く修業に出ていまして、朝の4時に起きて夕方遅くまで製造に携わる仕事をしていました。
朝4時から作り、みんなが起き上がる頃に出来上がるのがドイツの肉屋さんでの販売方法。
起きて朝イチにお肉屋さんに買いに行くと、できたてのハムやソーセージがあるんです。
日本の、昔のお豆腐屋さんのような感じですね。

 息子が修業から帰って来た時は、包丁使いもとてもうまくなっていて、ビックリしました。

 技術的なことよりも、仕事に対する真摯な態度で向き合うことは、良くがんばっているなと思います・・・今、ここに息子がいないんで言いますけど(笑)
普段は直接ほめませんので。

 

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勢志摩サミットでドイツのメルケル首相に食べてもらいたい!

 三重県は鹿やイノシシなどの獣害駆除に力を入れていますね。
今までだと、捕獲された鹿やイノシシは、そのまま埋葬されたり焼却処分され、人の口に入ることが非常に少なかったそうなんです。
しかし県の指導のもと、伊賀に『かじか』というシカ肉加工施設ができ、厳しい基準の中で処理された新鮮な肉を、手に入れられるようになりました。
そこの鹿と菰野豚をを合わせた『鹿肉シンケン』と『鹿肉ブルスト』を開発しました。
来年の『伊勢志摩サミット』にむけて『鹿肉ブルスト』と『熟成ベーコン』の2品が、県の推奨品に選定されたので、私としては是非ともドイツのメルケル首相に食べていただきたいと期待しています。
『伊勢志摩サミット』は三重県にとっては千載一遇のチャンス。
我々県民も応援のために新しい製品を作り、捕獲した害獣もしっかりとした施設で処理し、加工品として食べてもらえるシステムになっていることを、国内外にアピールできたらなと思います。