FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年9月10日放送

今年11月20日、伊勢志摩国立公園は指定70周年を迎えます。
1946年、戦後初めて指定を受けた国立公園です。
全国で32の国立公園がありますが、伊勢志摩国立公園は全体の96%が民有地。これは、とても珍しいそうです。
素晴らしい自然とそこに住む人々の文化。
すべてが重なりあってこの記念すべき年がやってきました。
今回のお客様は、『伊勢志摩国立公園協会』事務局長の滋野峻さん。
以前のお勤め先は鳥羽水族館。
自然が大好き、生き物が大好き、海が大好きな滋野さんです。

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熊山山頂からの景色が好き

朝熊山の頂上を第一にオススメしたいと思います。
内宮からスカイラインを使って車で15分もあれば行きますかね。
頂上に行くと360度の大パノラマが広がっています。
だいたいの人は足湯に浸かりながら、伊勢湾鳥羽湾を見下ろしています。
これは絶景です!
天気の良い日は答志島、神島、伊良湖岬までよく見えます。
さらに年に数回は富士山が見えますので、みなさんはやはり、海の方の景色を見ますね。
しかし私がおすすめするのは、山側。
山側の山並みが素晴らしく、そこがまさに『神宮林』なんです。
神宮林を眼下に見下ろせる、誰でも気軽に行けるのは朝熊山の頂上、ここ1ヶ所だけなのです。

 

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つの行政区がかかっている伊勢志摩国立公園

伊勢志摩国立公園は4つの行政区にかかっています。
伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町ですね。
そのうち鳥羽市と志摩市は全域が国立公園。
伊勢市と南伊勢町は「一部」国立公園です。

一部というと驚かれる方もいるかもしれませんが、伊勢市は内宮さんから流れる清流五十鈴川の右岸までが国立公園です。
上流から見て右側を右岸となり、二見などは国立公園となります。
ところが海岸線で言うと、大湊神社、河崎の町などは外れます。
実は宇治山田駅も伊勢市駅も外れているんですよ。
内宮さんの宇治橋は国立公園なんですけどね。
ただ、外宮さんは飛び地として特別保護区に指定されています。
もともと内宮さんがきっかけで国立公園として指定されているので、外宮を外すわけには行きませんからね。

南伊勢町は海岸線をずーっと国立公園に指定されていて、伊勢市と南伊勢町、ともに60%ほどが国立公園として指定されています。

 

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宮と伊勢志摩国立公園協会の考えが共通

もともと地元の有力者で政治家の尾崎行雄さんや浜田国松さん、そして御木本幸吉さん、初代伊勢志摩国立公園協会会長の石原延吉さんなどが指定に向けて努力したのですが、戦争で一時中断しました。
その後、戦争が終わって、世の中が乱れに乱れていました。
食べ物も着るものもない、住む家もないという状況の頃、お伊勢さんに大きな災が降りかかろうとしていました。
1300年培ってきた伊勢神宮の伝統文化を守っていけないという危機感が生まれ、当時の大宮司と小宮司が国に陳情に行っています。
それがきっかけとなり、指定となったのです。
以来70年、この地域が守られてきています。
神宮の考え方と国立公園の思想は非常に似ています。
国立公園は自然を守っていこうという考え。
伊勢神宮も伝統文化を守りつつ、神宮の森を『育てる山』と『守っていく山』の2つに分け、守っていく山は枝の一本も折らないくらい、大切に守られています。
自然を守り人々の生活を守るという意味では、共通していると思います。

 

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虞湾の役割と生き物たち

英虞湾は太平洋の荒波を半島で守るかのようになっています。
その中にまた、たくさんの島々があるので、ここは大きな湖よりも静かだと言われています。
『志摩自然学校』ではカヤックの体験ができたりしますしね。
真珠養殖が盛んになったのも、自然条件が整っていたからなんです。
国立公園全域に渡るものとして、海辺の生き物がいます。
例えばアカウミガメ。
アカウミガメの産卵地が伊勢志摩にはけっこうあり、その中で私が住んでいる伊勢市大湊町鷲が浜でもアカウミガメの産卵地として知られています。
毎年来ていて、今年も1頭上がってきています。
なのに大湊町は国立公園から外れているんですよね。
100kgにもなる巨体の大ウミガメが上がってきて、1度に100個の卵を産み、しかも1シーズンに2回産卵します。
合計200個生むわけですよね。
そして2ヶ月後に赤ちゃんカメが孵化し海に帰っていくわけです。
想像するだけでもいいですよね。

鳥羽水族館で飼育されている『スナメリ』は鯨類となります。
小型で湾内に多く、鳥羽水族館のすぐ前、ミキモト真珠島との間に入ってくることもまれにあります。
水族館の写真を撮っている人が、水槽ではなく外を見たらスナメリが泳いでいたという面白いエピソードもあります。
イルカもいますし、空を見ると秋は鷹の渡りを見ることができます。
特に鳥羽市の離島、三島由紀夫の文学にもなった『神島』では、10月頃になると関東から『サシバ』という鷹の仲間がたくさん飛んできます。
南方へ渡る、その通り道になっているんですね。
多くは夜、伊良湖岬で羽を休め、夜明けと同時に神島方向に向かってきます。
それを観察できる時は、多い日は1日に1000羽見ることもできます。
それはそれは壮観ですよ!
神島を通過すると答志島もしくは菅島を通り、それから朝熊山上空を越え、奈良や紀伊半島を越えて四国に向かいます。
鷹が見えるチャンスも秋にはあるので、空を見上げてもらいたいですね。

 

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つの市町それぞれのおすすめコース

11月20日から22日まで、全国エコツーリズム大会が行われます。
1日目は、記念式典、基調講演、レセプションがあり、2日目には12のコースのエクスカーション。
3日目は、インストラクターのみなさんの勉強会が行われ、12のエクスカーションを評議員が評価します。
多くの人にこの伊勢志摩のすばらしさを知ってもらいたいですね。

12コースのエコツアーは、熟練したインストラクターに、よりすぐりのコースを作ってもらいました。
普段は立ち入れないところに入れたり、普段は見えないものが見えたり、そういうコースが盛り沢山です。

たとえば南伊勢町のコースですと、マグロの養殖場を見学することができます。
普段でも水族館でマグロを見ることはできますが、沖合にある巨大な生け簀の中で泳ぐマグロの迫力、ド迫力と言ってもよいです。
これは水族館では味わえない醍醐味だと思います。

伊勢市では内宮に参拝するための、古くからある古道ですね。
紀伊半島からやってきた方々が南伊勢町の五ヶ所に上がり、山を伝って内宮に参拝しました。
途中『竜ヶ峠』というところがあり、これを越えるコースを用意しています。
このコースの魅力は、神宮の森を通り抜けられるということ。
普段体験できないコースだと思います。
紀伊半島からやってきてという道は、なかなか聞いたことがないと思います。

また鳥羽のコースでは神島島内を案内するコースもあります。
これは海女さんの町として知られていますが、案内するのはなんと神島小学校の小学生なんです。
これもまた楽しいと思います。
子どもたちがお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに一生懸命説明する、その様子を思い浮かべるだけでも感動しますね。
子どもたち目線で、普通では見えない神島が見えると思います。

志摩市で特徴的なのは、自転車でめぐるツアー。
非常に機動的な自転車を使うことで、かなりの距離を楽しむことができるので、志摩半島の一部・安乗岬あたりを走ります。
ただ走るだけでなく、途中のさとうきび畑でサトウキビ体験をしたりもします。
一番の注目は『安乗文楽』を観ることができる、特別ツアーです。
おまけに、美味しくて有名な『あのりふぐ』が昼食にでるという、至れり尽くせりコース。
12コース全部挙げればキリがありませんので数例を紹介しました。

 

勢志摩の良さを知ってもらうことがこの景観を守ることに

70周年の記念事業、たくさん行いますが、伊勢志摩の良さを地元の人にも知ってほしいし、県外からも海外からも来てほしいと思います。
そういう方々が満足できる景観もあります。
大勢来てもらうことで、ここの良さを知ってもらい理解してもらい・・・理解してもらうことで素晴らしい景観や自然を守っていけると思います。
それを後世に伝えるためにも、みなさんにご協力してほしいと思います。