FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年10月1日放送

今回のお客様は、伊賀市にある『NPO法人スポーツクラブどんぐり・FCアヴェニーダソル』のヘッドコーチ薮中一真さん、コーチの荒木在敏さん、三浦隆一さん。
クラブ創立10年目。
小学1年生から中学3年生まで200人の選手が在籍しています。
サッカーの魅力と楽しさ、そして喜びを子供達に伝えています。
この大所帯を引っ張っていくのが、ヘッドコーチの薮中一真さんです。

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(左)三浦隆一さん  (中)荒木在敏さん  (右)薮中一真さん

ラブの目標は『共育』

藪中
このクラブが始まったときから一番大事にしているのが『共育』。
「共に育つ」と書いて『共育』で、クラブの創始者である中田純一さんが、それを掲げていました。
子どもだけでなく、僕ら指導者や保護者の方を含めた三位一体でそれぞれの立場や役割で成長していこうと心がけています。

僕は6歳から大学・社会人まで15年ほど、サッカーをしていました。
当時はクラブチームのような環境がありませんでしたが、ボール一つでできるのがサッカーの魅力。
世界で一番愛されているスポーツなので、そういう意味で始めやすかったです。
ちょうどJリーグが始まったくらいのときだったので、1993年頃。
もう23年になりますかね。
三浦知良がブラジルから帰ってきて、サッカー熱が加熱したときで、僕もJリーグの試合をたくさん見に行きましたし、自然にサッカー選手になるのが夢になりました。

それから、昔と今は情報量が違いますね。
海外のサッカー選手と言えば、雑誌の切り抜きだとかで、動いている映像をなかなか見られませんでしたが、今は日常的に観られるます。
そういう意味では、今の子どもたちは本当にめぐまれた環境にいると思います。
クラブに在籍しているのは小学校1年からですが、他のスタッフが幼稚園を巡回していますので、幼稚園の生徒とも接する機会があります。
そして上は中学3年生までですが、このくらいの歳になるといろいろありますね。
ある意味、自分で考えられなくなるというか。
映像として観られるためか、自分から何かアクションを起こすことが少ないですね。
観ることで満足してしまっていると感じることがあります。

 

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ールキーパーの魅力

荒木 
私は今、中学生とジュニアユースとジュニアの、主にゴールキーパーのコーチを担当しています。
昔は「お前ちょっと太っているからキーパーやれ」とかありましたが、今はキーパーの人気もけっこうありますし、いろいろな選手がキーパーを体験します。
小学生のチームは全員が順番にキーパーの体験をして、その中で「楽しい」と思った子がやっていることが多いですね。
僕自身もキーパーでした。
僕の場合は太ってはいなかったのですが、小学校2年生の時にやれと言われて。
最初は納得していませんでしたが途中から楽しくなってきました。
後ろから見ていると、自分も点を取りたいなと思うのですが、シュートを止めるのは楽しいですし、味方が良いプレイをして相手方に点を入れたときに、それを見ていて、良かったなと思うことが多いです。
PK戦となるとキーパーがかわいそうという保護者などが多いですが、PKは基本的には入るのが当たり前なので、実際はほとんどのキーパーはプレッシャーを感じていないと思います。
それでも止められたらヒーローです。
小学生や中学生の試合でもPKになった時、選手に必ず言うのは、
「入れられて当たり前。5本のうち1本でも止めたらスーパーヒーローになれるぞ」と。
入れられても恥ずかしいことではないと伝え、送り出すようにしています。

 

動するすばらしさを子どもたちに伝えたい!

三浦 
三重県サッカー協会の『巡回サッカー指導』という授業があり、伊賀地区の幼稚園や保育園や保育所を巡回しています。
園の活動の一環でやっているので、まだやったことのない子も、全員参加します。
本当に十人十色で、それぞれの子どもたちにそれぞれの個性があります。
運動が好きな子、嫌いな子、誰かと何かをするのが得意な子、苦手な子。
その子どもたちがスポーツを楽しくできるよう、どう引き出しを作ったり仕掛けをするのかが、やり甲斐になりますね。
サッカーというより、ボール遊びというか運動が中心となってくるので、いつの間にかボールを蹴って、ゴールがあってサッカーをしていて・・・何かできた時に、男の子も女の子も達成感が持てれば良いと思います。
スポーツという視点でもそうですが、サッカーを初めてする子が特に女の子は多いと思います。
伊賀には、なでしこリーグ所属の『伊賀フットボールクラブくノ一』があるので、責任重大な立ち位置であります。
そういった部分を職員の先生たちに伝えながら、運動する素晴らしさを子どもたちに伝えられるよう、心がけています。

 

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ーチ、選手、保護者が一緒になってやっていくクラブ

藪中 
まず僕らが選手よりも勉強しなければならないし、選手よりもいろいろな知識を持っていないといけません。
しかしそれを伝えるだけでは難しいので、それをどう自分に置き換えてもらえるか考えながらやるようにしています。
クラブができて、今年で10年。
立ち上げ当時はクラブ自体も不安定で、いつ潰れてもおかしくないという状況でした。
そんな中、最初に来てくれた選手や父兄の方は、クラブへの想いに共感してくれ、覚悟を持って一緒にやってくれているという感覚がありました。
10年たった今はクラブも大きくなってきて、クラブに対して求めるものが増えてきている。
つまり僕らも求められることが多くなっているのですが、やはり「一緒に作っていく」というスタンスは変えたくないし、それがないと組織がうまくいかないと思います。
最初の頃は、なかなか学校施設を開放してもらえなかったので、ヤマギシ春日山実顕地のグラウンドを好意で貸してもらい、薄暗いナイターの中で十数人の子どもたちとボールを蹴ったところからはじまりました。
その時はその時で楽しかったですけどね(笑)。
本当に昔はいろいろなことがあって・・・ありすぎて覚えていないですけど。
今のクラブで『生活合宿』というのを年2回、春と秋におこなっています。
このときはサッカーの練習は一切せず、カマとクワを持って行き、豚や牛などの動物と触れ合ったり農作業をしたりします。
そんな中でもサッカーにつながることはたくさんあるので、そういうのをクラブではとても大切にしています。
合宿を終えたあとの子どもたちは、本当に変わります。
サッカーだけをしていると、子どもの中で段々と順番が決まってくるのですが、違うことをすることで、その順番がなくなっていったり、意外な一面が見えたり。
いつも威張っている子が虫を触れなくてからかわれたり、なんてこともあります(笑)。
そういうこともあり、組織としてうまくいくきっかけとなっています。
大人になってもサッカーを続ける子もいれば、やめる子もいるので、その時に何を学んできたかが大事だと思います。
僕たちもサッカーで助けられてきたし、サッカーでいろいろなことを教わって、今、社会に出ることができています。
そういう意味でサッカーだけじゃなく、スポーツを通じての生涯教育をしていきたいと思っています。

このクラブを大きくしてきた関本さんという上席がいたのですが、ガンで一年半の闘病の末に亡くなりました。
関本さんが最後まで言っていたのは『自立』ということ。
今まではクラブを作っていくために、必要以上に厳しくしたり、管理したりしていました。
新興チームなので、ちょっとしたほころびも突かれてしまいますから。
しかしこれからは選手も我々も自立し、それぞれの責任や役割を果たすことが大切だと思います。
クラブだけ、選手だけ、保護者だけが責任を負っているわけではなく、三者で役割を果たして、自立してやっていくと。
そういうクラブはなかなかないと思うので、そういう関係性であり距離感のクラブにしていきたいです。