FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年1月21日放送

今回のお客様は『ノッティハウスリビング』の坂成哉さん。
ノッティハウスリビングのコンセプトは「木を楽しむ丁寧な暮らし」。
木の家の新築やリフォーム、オーダー家具の製造販売をしています。
坂さんのお話しを聞いていると木への優しさも伝わってきます。
森からの贈り物をどのようにわたしたちの生活へ取り入れるか?
いろんな提案をしていただきながら自分にとっての居心地のいい空間のことを考えます。

の中心の赤色にリラクゼーション効果が

杉の丸太は外側が白くて、中が赤くなっています。
この赤い部分が杉独特の、リラックス効果を高める香り。
それを家具にしたり住宅の内装材にして、自然に感じてもらいながらリラックス空間を作りたいと考えています。

 

産材、地域材へのこだわり

ノッティハウスリビングでは国産材、特に地域材にこだわりがあります。
一般的に木の家具というと広葉樹・・・タモとかナラとかケヤキなどの堅い木が好まれるのですが、三重県にたくさんあるのは杉・ヒノキなので、それらの木をたくさん使って格好いい家具を作ろうと頑張っています。
もともと僕は亀山市の加太地区の山の中の出身で、祖父の代から製材業をしていました。
その頃は林業が盛んで、山からどんどん木を切って、切った分は植えてという自然のサイクルが循環していました。
実はこのお店は弟が立ち上げたもので、今年で10年め。
もっと一般の人に対してアピールしないと自然のサイクルが壊れてしまうということで、お店を立ち上げた10年ほど前から地域材・国産材を使おうと意識しながら、会社をやっているという感じです。

 

の良さをもっとアピールしたい

国産材や地域材を使う理由として、2つの視点があると思っています。
環境を守るという点で、まず構造材として使うということ。
柱とか梁とか、大きなボリュームで木をたくさん使わないと、山の木がそんなに循環できないと考えているので、可能な限りたくさん、構造材として使いたいと思っています。
しかし一般的には、環境に優しいから使うという気持ちがないと、そこに対してお金を出そうという気には、なかなかなってくれないと思います。
そこで僕たちは、子どもさんやこれから家を建てようと考えている若い夫婦やご家族に対して、木を使った家具を作る木工イベント、山の見学ツアーなどを開催しています。
身近に木の良さを知ってもらうため、かつ、木を循環させ山を循環させる環境を作らないと、子どもたちが大人になった時に困るよ、というのを訴えかけるためです。
山の見学ツアーは、三重県の山の現状を知ってもらいたいという想いを形にしています。
去年の山の見学ツアーは定員人数を上回る応募がありました。
そこからお客さんが汲み取ってくれ、感じとってくれることが、家を建てるときに三重の木を使ってくれるかどうかの大きなポイントだと思います。

そしてもう一つは、内装材に関して。
これは環境というよりも杉の香り。
家の中でリラックス空間を作り出したり、健康的な空間を作り出せるのは杉材、ヒノキ材なんです。
ただ、そればかり使うと、木に囲まれすぎていて圧迫感があるので、うまく他の自然素材と組み合わせながら、健康的な室内空間を作り上げていきます。
構造材とともに内装材としての杉ヒノキなど地元材の活用を、今後たくさんPRしていきたいですね。

 

い木とは

僕らが言う「良い木」は色目であったりとか、年輪がよく詰まっている・・・また自然木か天然木かの違いもあって。
自然木というのは植林した木。
植林した木というのは目はきれいですが、面白みがない。
でも天然木にはたくさん節はあるけど、その節が木目にからむような模様を作ってくれるので、これが特徴。
木目が美しいかどうか、好きかどうかがポイントとなってきます。
目が詰まっている方が頑丈で、より強いです。
年輪が詰まっているものは成長が遅かったりするので、同じ太さになるにも長い年月をかかります。
もちろん木としてはそのほうが価値があって丈夫です。
自然木、天然木の年輪を数えると、江戸時代のものがあったり。
それだけ年月をかけて育てた木を切って家具を作る、そして実際に自分の家で使うことができるという喜びは、大きいものがあると思います
特に天然木は木目の入り方や節を吟味しながら、一生懸命お客さんに決めてもらっているという感じですね。
僕らがアドバイスするのは、天然木の節の入り方、木目の流れ方、一言で言うと絵になるかどうか。
例えば80〜90cm幅で180cmのテーブルにしたときに、それがその家で絵になるかどうか、そのテーブルを好きでいられるかどうかが一番ですね。

 

の所有者が多く木を伐り出すことができない現状

三重県は飯高や飯南や尾鷲など、南の方に行くと大きな山があります。
このあたりの山は険しく、林業・製材業が盛んではありましたけど、大きな林業家が大きな山を持っているのではなく、いろいろな方が財産として細かく所有してきた山がほとんどです。
それがこの時代になり、山が財産にならなくなってきて、いろいろと別の問題が起き、山が整備されないという現状につながっていくわけです。
ここ加太地区の『加太材』は三重県のブランド材なので、それなりに林業が盛んだったのかなと思います。
良質な木が育つということで、林業をする人にとっては財産になる山だったのでしょう。
三重県内でも木の性質が違いますし、谷に生えている木、山の斜面に生えている木・・・生える場所によって、まったく木の質が変わってくるため、品質がなかなか均一にならず、非常に難しいと思います。
それが面白さでもあり難しさでもありますね。
このあたりには祖父が植林をした山があるのですが、もう65年以上たっています。
もう切りどきなんですが、切りに行けない事情があります。
先程も話したように、個人が細かく所有しているので、人の山を通らないと自分の所有山に入ることができないんです。
しかも今の時代、人力で出すわけにもいきません。
車が入れるような道をつけるためには、林業家さんが山の所有者さんを説得して、山に道を付けて、そこから木を出すということをしないといけない。
しかし実は、それができていない山がけっこう残っていて。
昨年、祖父が残したうちの山を見に行ったところ、成長しすぎた木が倒れている姿を目の当たりにしてしまいました。
なんとか僕の代で道筋をつけて、木を切りに行って出しに行けるようにしたいと、考えながら仕事をしています。

 

の有効活用を考えていきたい

三重県は林業県で、身近に杉ヒノキという素晴らしい材料がたくさんあります。
日本全国どこでもそうですが、特に最近、杉ヒノキの切り時が来ていて、今が宝の時期なんです。
なのにそれを放ったらかしの状態になっているところがあると思うので、まず今一度、なぜ先人が一生懸命に孫の代のために植林してきたのかを考え、そういう思いをきちんと汲み取りながら、木の有効活用をしなければ。
このままでは木が倒れて環境もダメにされます。
山側の環境がダメになるということは、川下の町や海の方まで影響が行ってしまうということ。
ぼくらの代で道筋を付けて、子どもたちにバトンタッチしていきたいというのが、一番の思いですね。