FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年6月24日放送

今回は『美杉むらのわ市場』の吉田菜穂子さんがお客様です。
むらのわ市場のスタートは2013年の春。
『美杉リゾート』火の谷ビール工場の前のスペースで毎月第2日曜日に行われています。
始めるきっかけは、ごはん会での会話から・・・
いろんな人が集まっています。

とつひとつ手づくりの下駄

久居にある『鈴友はきもの店』さんに鼻緒の仕立てをお願いし、家の修理をしてくれた『番匠』という大工さんに台を作ってもらっています。
私の担当は、鼻緒の表地を染めて仕立てに出すまで。
3人のコラボで下駄を作り、市場などで販売してます。
ほしいと行ってくださる方がいれば売ろうかなという感じ。
もう3年ほどになりますが、ちょこちょこと言ってくださる方がいますね。

 

の輪が広がったのは、『百姓池田家』の池田さんの紹介から

私が美杉に越してきて6年目。
こちらにきてからしばらくして『百姓池田家』の池田さんに出会って仲良くするようになりました。
その池田さんから、
「美杉で面白い人たちが集まって、夜ときどき「ご飯会」をしているから、菜穂ちゃんも来ない?」
と声をかけてもらい『ご飯会』に参加するようになりました。
そこに来ているのは、林業をしている人、移住してきて家を補修しながら楽しんで暮らしている人、干し野菜や野草茶を作っている坂本幸さん・・・けっこう味のある面白い人がそろっていました。
お店をしている人もいない人も、私以外全員一芸を持っている感じ(笑)
このメンバーで夜ご飯を食べているだけじゃもったいないなと思いました。
昼間にみんなでいる時間をもっと長く持てたら、お互いにコラボレーションのようなものが生まれて、美杉の中の人がもっとつながり合っていけるのではないかと。
そこで現在会場として使わせてもらっている『美杉リゾート』の中川雄貴くんに相談し、池田さんにも話したところ、市場が良いという方向になりました。
12人ほど参加していたその日のご飯会の時に提案したら、全員賛同してくれて、その夜に市場のイメージというか骨格が決まりました。
11月だったのですが、池田さんから、やるならすぐやらないとずっとやらない、と発破をかけられ、翌年の4月に初めて開催し、これまで続いています。

 

いお母さんたちに安心安全な食と暮らしを発信していきたい

当初から、外に向かって発信していきたいという気持ちがあり、誰に発信するのかというと子育て中の若いお母さんたち。
子どもさんが大きくなって次の世代を担っていくことを考え、食の大切さやこういう暮らしを見てもらいたい。
そのためにお母さんたちが子ども連れて来てほしいね、と、みんなで話していました。
市場は輪っかになっているのですが、2年3年と経ってきたあたりから、子どもさんがその中で遊ぶようになってきました。
遊びやすいのでしょうね。
誰かが一緒に遊んでくれるというのが、なんとなく市場の雰囲気としてあるので、安心して放しておけるというか。
お母さん同士話しながら椅子に座って何か食べて、子どもさんが遊んでいる姿を見ながら過ごせるので、リピートしてきてくださる人が多くなってきました。
よく見る顔の人もたくさんいて、久居や津、もっと遠くから来てくれるお客さんもいます。
子どもが遊べて自分もほっとひと息つけるような空間になっていると思います。
移住する前に何度か市場に足を運んで、美杉という場所の雰囲気を知って、移住を決めたと言ってくださる人もいらっしゃるそうなので、遠くの方が普段の私たちの様子を見てもらえる場にはなっているかなと思います。

 

場は小さくていいので深く知っていくこと

『むらのわ市場』のコンセプトは、「人と人をつなぐ、手仕事をつたえていく、体が喜ぶ食を提案する」この3つ。
市場だけで頑張っていくと、規模をどんどん大きくしていくことが目標となってしまいます。
でもそうではなく、市場は小さく、でも深く。
市場の数時間でどれだけ深く知ることができるかわかりませんが、そこで出会って興味をもつということが大切。
また別の時にもうちょっと長い時間一緒に過ごして、興味があるところにまた小さな輪っかができて、そこの話が盛り上がり仲良くなって、助け合いができればいいなと思います。
そういう小さな出会いの輪っかがたくさんあって、市場もその輪っかのひとつで良いと思います。
全体がたくさんのゆるい輪っかでできている方が、大きな輪っかが1つドーンとあるより強いというか融通が利くような気がするんですよ。
それをいいなと思ってくれて美杉に来てくれたらとても嬉しいし、自分の住む地域で輪を作りたいなと思ってもらえたら最高に嬉しいです。
1つが大きくなっていくことは、とても脆いと思うんです。
地域ごとの小さな輪のつながりが、それぞれの地区に1つずつあって、ゆるくお互いが知り合っていれば、いろいろな交流が生まれ、しかもそれぞれの個性やスタイルをもっと発揮できて。
だけど全体がつながっているという強さもあって、いいんじゃないかな。
そういうあり方が、ようやく自分の中でイメージできたので、協力してくれているみんなの個性をもっともっと発揮できるようなイベントやサークル活動をしていきたいと思います。

 

ら細工を作るサークル『わらのわ』が活動開始!

『むらのわ市場』がきっかけで今、『ちどりの里』のわら細工のサークルを作っています。
美杉町の竹原で『ちどりの里』という朝市を開催している人がいて、そこの森谷正巳さんというおじいちゃんが、わら細工を作ることができるんですね。
三重県内でももうほとんど、作ることのできる人が残っていないので、こういった手仕事を伝えていかなければとの思いから、まずは私たちができるようになり、次の世代へ伝えていこうと、市場が始まった頃から言っていました。
何回か教室をしていたところ、真剣に習いたいという人が出てきてくれて、去年の秋頃から毎月開催しています。
半年ほどになりますが、始めた3人はもう、縄を綯ってわらカゴを自分で作ることができるようになりました。
『むらのわ』から生まれたので『わらのわ』という名前を付けて、わら細工を販売したり、作り方を教えたりする活動をしていきたいという話を今、しているところです。
それも小さな輪っかのひとつですが、このカゴに何を入れて売ったら良いかとか、わらを作る材料となるお米も、仲間の誰かが育ててくれたら良いなとか、そこからまた派生するものがあります。
楽しみながらできるし、普段からわら仲間と話をしたり物のやり取りをしたり、どんどん広がっていくし、良かったなと思っています。
森谷さんも、学んでくれる人がいて嬉しいと喜んでくれていて、池田屋さんからも百点満点のお墨付きをいただきました。
他の出店メンバーも伝えたいことがあると思うので、それらをひとつずつピックアップして何かの形で場を作っていきたいですね。

 

杉のよさを街の人たちにも伝えていきたい

谷の綺麗な水を飲んでいるだけで、身体も心も洗われていきます。
すっきりした後に、本来の自分が見えてくるような気がするんですね。
美杉に遊びに来て、自分にくっついているいろいろなものを払い落として、少し軽くなった自分が何を持っているか、見ることができるんじゃないかな。
山の深さには、自分のいらないものを吸い取ってくれる力がある気がするし、私たちはそういうところで生かされているということを、そして美杉の良さを、街の人にも伝えていきたいです。