三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2017年4月23日

国指定名勝『日本さくら名所100選』に選ばれた津市美杉町『三多気地区』の桜は、毎年、見頃を迎えると県内外から訪れる多くの花見客でにぎわいます! その地元が誇る三多気の桜を訪ねる人をもてなそうと開催されているのが『三多気桜まつり』! 地元住民を中心に、祭りの運営に関わっている実行委員会を紹介します!

棚田に映える山桜。 かやぶき屋根と、遠くに広がる山並み。 国の名勝に指定され、『さくら名所100選』にも認定された『三多気(みたけ)の桜』は、伊勢本街道から真福院(しんぷくいん)の山門に至る1.5kmあまりの参道に咲く桜並木です。 標高が高いため、他より10日ほど遅れる開花時期には、県内外から大勢の見物客が訪れます。

 

今年も、4月8日土曜日と9日日曜日の2日間にわたって開催されたのが『三多気桜まつり』。 毎年4月上旬に開催される、地域をあげての一大イベントです。 自治会、商工会、老人会など、地域のみなさんが協力し、県内外から、やって来るお客さんを精一杯おもてなしします。

 

『三多気桜まつり実行委員会』委員長の岸野隆夫さんに、実行委員会のメンバーなどについてお聞きしました。 「『桜まつり』の運営に関わるのは、地域の自治会長15人ほどと、老人クラブの会長、JAの女性部の会員やその他、いろいろな団体の人に協力してもらって総勢50人ほど。 地域に住んでいると何も思いませんが、外部の人からは素晴らしい桜だと言われるので、毎年がんばっています」

 

『三多気の桜まつり』の人気は、名松線の終点『伊勢奥津駅』でもわかります。 平成21年の台風18号で大きな被害を受けた名松線は、昨年3月、奇跡の全線復旧を果たしました。 その直後に開催された桜まつりは、来場者の数が大幅にアップ。 名松線の復旧は、美杉地域の活性化の起爆剤になっています。 この日もたくさんの人が『三多気の桜まつり』に訪れていました。

 

こちらは会場の一つ、『夜桜広場』。 地元商工会、地域のみなさんによる物販コーナーが開設され、美杉地域自慢の特産品や加工品が並べられていました。 地元の豊富な食材、おいしい魅力を積極的に売り込んでいました。

 

一方そのころ、実行委員会のみなさんは、続々とやって来る来場者の対応に大わらわ。 会場内の道案内に、会場周辺の駐車場の案内。 みなさん、休む暇もありません。

 

「今日は、花があまり咲いていない割には、たくさん来ていただいてます。 このお祭りが浸透しているという実感があります」 「最近では北海道から沖縄の方が来られるなど、全国に広がっているのかなと思います」 「桜祭りを迎えるにあたっては、まずサービスが原点なので、来てもらった人に満足してもらえるようにしたいと思っています」 と、実行委員の日高さん、福井さん、中尾さん。

 

別の会場となっている真福院の境内では、餅つきが行われています。 行っているのは三多気地区をはじめとした美杉地域に、古くから伝わる伝統を今に残す『千本搗き保存会』のみなさん。 子孫繁栄・五穀豊穣を願って行う、この地域ならではの餅つき。 みんなで棒を持ち、息を揃え、力を合わせて搗くことに意味があるそうです。

 

つき上がったばかりのお餅は、地元のお母さんたちによって『きなこ餅』に。 ヨモギの緑と香りが、おいしそうです。

 

「伝統を守ることは大切なことです」 と、語る『千本搗き保存会』の西村さんは、なんと御年90歳! まだまだお元気です! 「みなさんに『おいしい』と言ってもらっています。 やはり、売っているお餅よりヨモギの量が多いですね。 みんなが摘んで持ち寄って、搗く前に茹でたものを使っているから、よもぎの風味がとても強いと思います」 と、同じく『千本搗き保存会』の鳥井さん。

 

こちらで準備している大鍋は、『伊勢地イベント会』の境さんたちによる『山賊鍋』。 地元でとれた野菜・・・大根や人参、里芋、シイタケ、スギタケなどと、ブタ肉、それから地元の味噌で作ります。 毎年恒例で500人分用意していますが、それでも足りないくらいだとか。 去年の桜まつりで口にし、この味が忘れられずに今年も訪れた人が何人もいるそうです。 桜まつりの最後は、真福院で儀式が執り行われ、恒例となっている来場者へのお餅のもてなし。 千本搗きで搗いた餅が、たくさんの人に配られました。 今年も、地元の人口を大きく超える数の人が集まり、祭りは大いに盛り上がりました。

 

「過疎になっていく地域ですが、この桜を通じて一人の方にでも多く、この地域を訪れて頂ければ、私たちは幸いかなと思っています」 と、実行委員会の橋本さん。 そして実行委員長の岸野さんは、 「1000年を超える桜の名所ということで、昭和17年に国の名勝にも指定されています。 先人から受け継いだこの地域を、後世の人たちにも伝承していきたいという思いでまつりを続けています。 高齢化している地域なので、これからどうやって継続をしていくのかが課題ですね」 と、地域のこれからに思いを馳せます。

 

春、満開。 しかし、お客さんをもてなす三多気地区のみなさんには、桜を見上げる余裕はありません。 大変だけど、楽しいから。 みなさんは、そう笑って奔走します。