FM三重『ウィークエンドカフェ』2022年3月26日放送

朝9時、伊勢市立小俣図書館の開館時間です。
土曜日は親子連れ、平日はシニア層のみなさんが多く訪れています。
今回は、『伊勢市立小俣図書館』の館長、谷口康雄さんがお客様です。

俣図書館は半分が児童書。全国でも稀といわれている

伊勢市が人口が減っている中、ここ小俣地域はこの状況の中、人口が増えているんです。
とても静かですが、若い世代の親御さんがお子さんと一緒に図書館に来てくださって、たくさん本を借りてくれます。
この町を愛して、豊かに暮らしている様子を見て取ることができ、そのお手伝いができるのをとてもうれしく思っています。
一般の図書館は大人が読む本、あとは高校生や小学校くらいのお子さんを対象としていることが多く、六割五分から七割近くが一般書籍、残りが児童書というところが多いです。
しかし小俣図書館は、ほぼ半々。
月によると児童書の貸し出しのほうが多いという特別な状況があり、全国でも稀なところだと思います。
たくさんお子さんを連れたお父さんが、両手の買い物かごに絵本をいっぱい詰めていて、家族カードもいっぱいいっぱい使い切るほどに本を借りていただいています。
また、お子さん向けの『おはなし会』にも力を入れていまして、コロナの状況で定員は絞っていますが、応募型のイベントは、応募を開始した当日に満員になるほどです。
図書館に来て本を借りる、図書館で本の読み聞かせを楽しむという流れがこの図書館で生まれています。

 

間600冊を借りている図書館愛用者だった

私の以前の職業は、新聞記者。
42年ぶりに東京から故郷の小俣に帰ってきました。
今までの経験を活かし、図書館の運営をしています。

前職の仕事で、全国のいろいろな所でいろいろな人に会うというとき、図書館を徹底的に使いました。
年間で600冊以上本を借りていました。
例えばある方に会いにいくときに、その方が今までどんなことをしてきたのか、どんな発言をされているのか…そういうのを雑誌の記事を見て、本を読んで、また、その方に関連する本を読むことで、徹底的に調べて、実際に会うときにはその人のこと、住んでいる街のこと、その地域の企業さんに、ある意味大ファンになって行くような気持ちになります。
そうなってから会うと話もスムーズですし、良いお話を聞くことができたりします。
仕事をする間はずっと図書館を利用する生活をしていました。
そういったところが何かの役に立つことが必ずあるので、自分の知識や興味のあるところをどんどん広げていきました。
一冊本を読めば、また違う知りたいことが出てくる。
この言葉はなんだろうと調べていくうちに、面白いところで物事がつながっていっったりします。
そういう意味で図書館を大事なツールの一つとして使って欲しいと思います。

 

のみなさんがどんな本を求めているのか、どんな傾向があるのかチェック

いろいろな所でいろいろなお話を聞いてバックボーンを知っていきます。
芸術でも産業でもそうですが、どういうふうに人がものづくりや価値づくりをしているのかを見てきた人間ですので、一つ一つの本に込められているものがどんなものか、それを伝えていく方法が発信していく方法だと思います。
本のことはどのスタッフも『町の宝』だと思っていて、本の内容がどんなふうにこの町に必要なのか、どんな人がどんな本に興味を持っているのか…合致しながらスタッフで本を選んで、相談承っています。
そういう使い方をしながら、自分の探したい本、求めている情報にたどり着いてもらえると、地域の役に立てているな、と感じられます。
毎週のように新刊の案内が来て、そこから全員で本を選んでいきます。
「この本ほしい」「これもほしい」…どの本を見てもそう思う中で選別します。
個々の声を聞くことはなかなかできませんが、カウンターに立って利用者さんと向き合って、どの本が目の前で借りられていくのか。
戸棚を整理していく中で、この書棚では本が動いているとか、他の書棚はどうかな、と、スタッフみんながきちんと、本がどう見られているか使われているかをチェックしています。

 

書館は体験してもらう場所

伊勢市内で図書館の登録している人はおよそ8万人。
12万人の町では高い登録率となっています。
さまざまな人が訪れ、それぞれに楽しんでいます。
私たちの図書館では季節に合わせてさまざまな催し物を行っています。
催し物を楽しみたいと、家族そろって来てくれることも多く、ハロウィンだと仮装して来てくださいます。
館内も飾り付けがしてあって、その前で記念写真を撮ることもできます。
親御さんから「子どもが図書館に行って写真を撮りたい、と言うので来ました」と言ってもらったりしました。
クリスマスのおはなし会ではお子さんがサンタさんの格好をして、家族で温かい時間を過ごしていただいています。
普段はなかなか本を借りに来てくれない中高生が、七夕になると短冊に願い事を書いてくださるんですね。
そう思うと、図書館は本を借りて読む場所というだけでなく、自分が来て体験できる場所にもなっているのを感じます。
ですから、そういう機会をどんどんつなげていきたいと思っています。
来年は開館して25周年となるので、いろいろなイベントをご用意しながら、もっとみなさんに来ていただける場所にしたいと思います。

みなさんがどういう生活で、どういう思いでいるのかが借りていただく本にもあらわれています。
それにどうやってお応えしていくかを考えていくのが、私たちの仕事だと思っています。
本を通して、町に寄り添うようにしていきたいですね。