FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年10月24日放送

『ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは』
小倉百人一首17番、在原業平が古今集で詠んだ秋の歌です。
今回のお客様は『三重県かるた協会』の太田富夫さん。
カルタ道場では、いつも熱い戦いが行われています。

るたは畳の上の格闘技

我々はかるたをスポーツの一種と思ってやっていますし、『畳の上の格闘技』と呼ばれたりもします。
下は小学生…幼稚園もいるかな。
上は70代の方も見えます。
私はいつもかるたをPRするときに言っているのですが、性別や年齢にあまり関係なく、それぞれの年代に楽しんでもらえる競技です。
試合で使うのは小倉百人一首のかるたなので、基本的には百首。
試合ではそのうちランダムに選んだ50枚を使います。
25枚・25枚で相手と自分の陣で、3段の87cmに並べます。
呼ばれて取りますが、自分のほうが取られれば、自分のほうが1枚減ることになります。
相手の方を取れば、自分の陣地から1枚、好きな札を相手にあげます。
取れば取るだけ自分の陣地の分がなくなりますので、相手よりも早く自分の陣地をなくしたほうが勝ち。
ルールは至って単純です。
読むのは100枚読むので、読まれてもない札が50枚あるということがミソでして、自分たちの場にない札でも、何が読まれて読まれていないのかを常に計算をしておかないといけない。
例えば『あ』から始まる札は16枚あるのですが、15枚取られてしまえば、残りの1枚は『あ』と読んだ段階で取れるわけです。
それを計算できているかいないかで、早く取れるかどうかの勝負を分けるポイントとなります。

 

がほぼ同じ歌がある。それをしっかり聞き分けることも大切

読まれた札を、自分の耳で聞き分けて正確に取るかも技術なので、そこが上手い人は早く上達しますね。
そこも練習のしがいのあるところかなと思います。
『大山札』と呼ばれる、最初から6字まで聞かないとわからない札があります。
例えば、
『きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ』
という歌がありますが、『きみがため』までまったく同じ札があるんですね。
『きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな』
という歌があります。
『は』か『を』まで聞かないと、どちらかわからないんですね。
これが一番長いですね。
他にも『あさぼらけ』や『わたのはら』などの組み合わせがあります。
そういうのをきちんとどこまで聞けるか…難しいですね。
反射神経と集中力、ですかね。
1試合にだいたい1時間半かかりますので、その間ずっと場にある札の場所に集中します。
読まれてから探すのでは間に合わないので、自分の頭の中にどの札がどこにあるのかをインプットして、読まれたらパッと手が出るようにします。
それを1時間半の間繰り返していると、精神的にも疲れますね。

 

正12年に桑名若菜会ができた。そして県内に会が広がった

私はかるたを始めて40年ほどになります。
三重県での発祥は桑名で、大正12年に『桑名若菜会』ができたのが最初。
最初はそこで細々とやっていましたが、県内にも広めようと我々の先輩が県内を回って普及活動をして、徐々に広がっていきました。
今は県全体…と言っても中勢くらいまでで南勢はまだありません。
1923年ですから、もうすぐ100年になります。
小倉百人一首自体は1235年で、いろいろ説はありますが藤原定家が襖絵で選んだという話があります。
諸説あるので、どれが正しいかはわかりませんが。
ただ、これを使って競技かるたにしたのは、1904年。
黒山涙香という当時のジャーナリストがそれまでまちまちだったルールを統一して、最初の全国大会を東京で開いたのが始まりと言われています。
歴史がありますね。
我々は3月に『桑名大会』という全国大会を主催をしていますが、今度は79回になります。
戦前から続いている大会は全国で数えるほどしかないので、歴史のある会なのかなと思っています。

 

画『ちはやふる』の影響で会員が増えた

漫画『ちはやふる』が2009年にまんが大賞を受賞し、その後、テレビでアニメ放送が始まり、映画化もされました。
その頃を境に急激に会員が増えましたね。
我々はそれまでも細々と普及活動してきたものの、なかなか増えなかったのですが、あれからどんどん増えてきまして、ありがたい話です。
練習会場を確保するのも大変で、指導するにしても人数が多すぎて。
昔は1対1で指導していたのですが、今はなかなか会員が多くて指導者が少ないという状況になっています。
指導するのもめが行き届かなくて大変です。
まあ、嬉しい悲鳴ではあるのですが。
あとはこういう人たちにどうしたら続けてもらえるか…そういった面では、とても責任を感じますね。

読まれて反応して、札が取れたときの快感は大きいですね。
もちろん試合に勝てばもっと嬉しいですが、仮に負けてしまっても自分の思うような反応ができて札が取れたときは、快感です。