FM三重『ウィークエンドカフェ』2024年3月9日放送

きれいに剪定された槙の木と立派な石垣に囲まれたお家。
今回のお客様、絵本作家の二見正直さんのアトリエです。
伊勢の静かな集落で二見さんの絵本が生まれています。

冊の絵本との出会いが作家の道へ歩んだきっかけ

20歳くらいのときに、ユリ・シュルヴィッツの『ゆき』という絵本に出会ったのが、私にとって衝撃的でした。
当時、ぜんぜん分野の違う、理系の大学生だったんですが、絵本の魅力に取りつかれ、大学を中退して絵本の製作に精を出すという、親不孝な道に進んでしまいました。
本は大好きで、特に思い出に残っていることがあります。
小学校1年生くらいのときに、父が本をプレゼントしてくれました。
それがとても長い絵本で『ピノキオの冒険』というタイトルだったと思います。
初めてそれを手に取ったとき、こんなに長い本を読めるはずがないと思ったのですが、読み始めたら面白くてのめり込んで、スラスラではありませんでしたが、最後まで読み終わることができました。
それが嬉しかったというか、自信につながったというか。
かつ、その後も父親が本だったらいくらでも金を出すよと言ってくれたんです。
他のことはけっこう欲しいものも買えずに、という感じだったんです。
洋服などもお下がりだったし。
でも、本だけはお金を出してくれたので、それもあって本はとっても好きでした。

 

い時はとても苦しんだ。お風呂に入っているときなどアイデアが浮かぶ

若いときはもう、意識せずとも24時間、ストーリーをああしようこうしようと考えていました。
どうしても壁にぶつかるんですよ。
煮詰まって。
絶対に本を作ると、どこかで壁にぶち当たるんですけど、そのときに、お風呂に入ったときにパッとアイデアが浮かんだり、こたつでゆっくりしているときに何か壁を突破できるようなアイデアを思いついたり。
リラックスしているときに、壁を突破するという経験は何度かしています。
傍から見ると楽しげに思われるかもしれませんが、やはりエッセンスを凝縮しないといけないですし。
祖父が画家だったこともあり、家庭の中で、わりと自由に絵を描ける環境ではありました。
それもあり、クラスの中では上手な方だとは言われていました。
ただ自分がプロになれるほどの技量があるかというと、そうは思えなくて、正直、全然思っていなくて。
そっちの道に行こうとも思っていなかったのに、絵本の魅力に取り憑かれて、技術もなにもないけど走り出した、みたいなところがあります。

 

語に合った絵にする。文章作家さんの物語に絵をつけるのも楽しい

今まで十何冊か本を出してきましたが、それぞれの本にお話のテイストがありますので、そのテイストに合った絵を描きたいなと思っています。
絵本は絵が中心のようだけど、実はお話の本がメインで主役だと、私は考えています。
お話に合わせて、タッチを変えたり画材を変えたり、試行錯誤して絵を変えています。
いただいた仕事で、『えんまのはいしゃ』という、くすのきしげのりさんの文章に絵をつけさせていただきました。
ほぼほぼ文章ができている中で、ページの割り振りなど、私もアイデアを出しまして、文章作家さんと一緒に作っていくという感じでした。
編集さんも含めて3人のチームワークの作業もたくさんあります。
楽しいですよ。
私がちょっと文章にアイデアを出させてもらったりとか、逆に文章作家さんから絵の方にアイデアをいただいたり、そういうやりとりが楽しかったりしますね。
3人で作っていくという感じ。
必死でやるんでね、あまり楽しむというよりは、自分のできることを精一杯やるという感じです。

 

が好きな男の子、ウサギが好きな女の子、絵本作りに没頭する人。学ぶことがたくさんある

よく言われるのが、『教えることは教わること』。
まさにそのとおりだなと思います。
全然知らないことを、たくさん子どもたちから教えてもらっています。
「こんなに虫が大好きなんだ!」とか。
虫の絵を用意しておくと、教室に入った途端目をキラキラ輝かせ男の子とか。
女の子だとウサギとか大好きで描きたいと言ってきたり。
あと、私が全然知らないポケモンのキャラクターとか、そういう知らないこともたくさんたくさん教わっています。
こっちが教わっているなあと、よく思います。
大人の方はとても熱心ですね。
特に絵本づくりにはとても熱心に取り組まれます。
描きたくても今まで機会がなかった、という方がとても多いので、水を得た魚のように、たくさんたくさん、宿題を出しているわけではないのですが、教室だけにとどまらずお家でも進めて行く方が多いですね。
最近心配なのが、ご家族をほったらかして製作する人がいることですね。
朝の3時まで描いちゃうとか。
ご主人から苦情が来ないか、最近心配するようになってきました。

ただ絵が描いてある本には興味はなくて、絵しか描かれていなくてもそこにお話を感じられるものが、私は好きです。