三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2017年3月26日

外国籍・重国籍などの外国につながる子どもたちが、安心して日本の小中学校に転入できるように支援する津市教育委員会の取り組み『初期日本語教室「きずな」』!
日本語をほとんど話すことが出来ない児童生徒を対象としたプログラムで、独自のカリキュラム・教材を使用。
指導役は、津市の職員をはじめボランティアが努め、初期段階の日本語学習を通じて、就学・進学や日本社会での居場所づくりなどを支援しています!

津市のセンターパレスで、毎週月曜日から金曜日に行われている『初期日本語教室「きずな」』。
日本語がわからない外国につながる子どもたちが、日常生活で必要な日本語の 力を「話す・聞く」「読む」「書く」のカリキュラムに沿って、短期間 (3ヶ月~4ヶ月)で習得することを目的とした教室です。

 

津市教育委員会人権教育課の金児由美さんに、『初期日本語教室「きずな」』についてお聞きしました。

「外国につながる子どもたちの小中学校の在籍率が、三重県は日本で一番割合が高い県なんです。
中でも約570名の子どもたちが、日本語指導を必要とされています。
以前は、初期の日本語指導は各学校に任せている状態でしたが、それよりもカリキュラムを組み、それに沿って指導を行う方が効果的であることがわかってきたため、『きずな教室』を作ることなったのです」

 

初期日本語教室『きずな』を運営するのは、津市教育委員会。
先生をつとめるのは、60名ほどのボランティアと市の職員。
通訳がいなくても日本語で十分に教えることが出来るような教材を準備しています。
先生になるには、資格などは、特に必要はなく、主婦や退職した教師、大学生など、様々な人がボランティアで教えています。

 

「やはり、子どもたちが日本語を覚えて、それを使って、楽しそうにしていたりとか、学校でその成果が出ていたら、それは本当にうれしいです。
教室がなかったら、この子たちはどうなるのかなと心配になります。
成長していく過程を見られ、著しい結果が出てるのがわかるので、『きずな』は絶対必要だと思います」

と、ボランティア講師の山本智恵さん。

「普段は、三重大学の教育学部で勉強しています。
まだ今日で3回目なので、授業の様子などを見て、指導法を学ぶつもりです。
学校に行けていない子もいるので、そういう面でも、この教室は大事ですし、登校してからも学習するために日本語が必要なので、『きずな教室』がサポートできるのではと思います」

と、羽渓慶喜さん。

「まったく日本語が分からずに来る子どもが多いので、たくさんの人数で授業をしたら、日本語を覚えるのに時間がかかると思います。
マンツーマンだから、短期間で日本語を習得することができるのです。
色々な教材やしっかりしたカリキュラムを津市が用意してくれていて、それに従って授業をしているので、そんなに苦労はありません」

と、ボランティア講師の望月順一さん。
きずな教室の日本語指導は『マンツーマン(1対1)』方式。
日本語で日本語を教える形で対応し、指導は 津市独自のカリキュラム・教材を使用しています。
平日(月曜~金曜)の9:00〜11:15、1日2限の授業を実施。

 

フィリピンから来日したシタン・グエンさんは10歳。
2月から教室に通っています。
日本語はとてもむずかしいそうです。

 

同じくフィリピンから来たシタン・ケイトさんは13歳。

「イス、母さん、でんわ、こんにちは、こんばんは」などの言葉を覚えました。

 

2時間マンツーマン授業の後は、みんなで、ゲームや日本の遊びを楽しむ「きずなタイム」の時間が設けられています。

カルタやおはじきなど、日本ならでは遊びを楽しんで文化を学び、節分の豆撒きや折り紙などを体験して日本の季節や行事を知ってもらいます。
『きずな』の時間は、学校の授業としてカウントされ、教室が終わると子どもたちは普段通っている学校へと戻り、午後からは学校での授業となります。

 

日本語の読み書きが難しい子どもたちに対する教室は他の市町でも行われていますが、そんな中、津市はどこよりも早く、小中学校に出張する『移動教室』も始めています。
3年前からスタートした『移動きずな教室』は、津センターパレスまで通えない児童生徒のために、現在、市内の小学校7校と、中学校1校で実施。

 

カリキュラムや教材は、津センターパレスの『きずな教室』と同じボランティアの先生が、学校に足を運び、それぞれの学校の授業スケジュールに合わせて行われています。
こちら敬和小学校は津市内でも外国につながる児童数が多い学校のひとつで、早くから『移動きずな教室』が導入されています。

 

こちらは、敬和小学校の6年生の教室。
そこで授業を受けるのは、フィリピン生まれのレイマートさん。
1年前に来日。
『きずな教室』で日本語を学び、去年9月に卒室しました。
今一番楽しいことは?と尋ねたところ・・・

「ドッジボール、鬼ごっこ」

好きな食べ物はカップラーメンとのこと。
だいぶ日本での生活にも慣れたようですね。

 

「私は英語が苦手です。
英語そのものより、子どもたちが可愛いから、大好きだから、子どもの方に、ちょっと近づきたいなと思ったんです」

とボランティア講師の池田正代さん。

「卒室して行った人たちにとっても、先々の心の拠り所になっていけば、いいかなと思っています」

と、同じく講師の野呂俊子さん。

 

「この教室を卒室していった人たちが、この教室を通して日本語のベースができ、学校生活や日本の社会に溶け込んでいる姿を見ると、本当に欠かせない大事な教室だなと思います」

と、津市外国人児童生徒通訳等巡回担当員の深草泉さん。

「卒室した子どもと時々会い、楽しそうに高校生活を送ってるのを見ると、こらも嬉しくなります。
自分たちがやっている意味というのが、そこにあると感じるので、みんなで続けていきたいいですね」

と、金児さん。

 

『初期日本語教室「きずな」』はスタートして5年。
これまでに、およそ130人の児童生徒が巣立っていきました。
ボランティアの先生たちと向き合い、きずな教室で過ごした時間に、子どもたちが学んだのは、決して日本語だけではありません。

 

※『初期日本語教室「きずな」』では、子どもたちのためにボランティアを募集中!
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