FM三重『ウィークエンドカフェ』2024年1月6日放送

志摩市大王町波切。灯台のある港町に『真珠の店あらふら丸』があります。
今回は中村滋さんがお客様。
お店の名前『あらふら丸』には、中村さんのルーツが秘められています。

じいさんがオーストラリアのアラフラ海に白蝶貝を採りにいっていた

『真珠の店あらふら丸』と名前をつけたのはうちの父なんですが、それには祖父が関係しています。
祖父がオーストラリアの『アラフラ海』で真珠を養殖する貝『白蝶貝』というのを採りに行っていまして、それで船の名前が『あらふら丸』となっていたので、それをうちの父がそのまま店名にして『真珠の店あらふら丸』となりました。
もともとは戦前の昭和6年に『あらふら丸』という船を、伊勢の大湊の方の造船所で造っていただいて、その船で真珠貝を採取に行っていたのが、はじまりの名前です。
祖父は男だけの5人兄弟なんですが、5人とも海外に行っていたと聞いています。
三男と、祖父である四男、五男で『あらふら丸』で一緒にオーストラリアに行っていたそうです。
長男は中国の天津、次男はハワイに行っていたと聞いています。

 

代の残した貴重な遺産を販売している

最初は海外のバイヤーさんに売っていたんですよ。
自分で白蝶貝の加工にすることはありませんでした。
欧米の方は日本人を労働者としか見ていなかったので、安い買取額でした。
これじゃあ我々、聞いていたのと違うということで、自分たちで貝ボタンまで作ってみようということで、貝ボタンの製造に乗り出したと聞いております。
貝ボタンの生産は昭和12年頃にはじまったと聞いています。
それからしばらく作っていて、戦後また再開したんですけど、昭和16年より戦争が始まったので、その間は製造していませんでした。
法律ができるんですよ。
で、採りに行けなくなるので、それまでの間というのか、再開したのが昭和28年で、法律ができたのが昭和30年。
2年ほどしか採りに行けなくなりまして、その後は真珠養殖した貝を輸入して、ボタンに加工していたと聞いています。
やめたあとの在庫を整理しながら、こちらの真珠の店で販売しています。
貝のパーツであったり、原貝であったり、途中のものであったり、今では貴重な貝殻がたくさん倉庫にありまして、それをコツコツ整理しながら、みなさんに提供させてもらっています。
先代の残していただいた貴重な遺産を、我々が販売させていただいて、価値あるものとしてみなさんに提供できているのを、本当にありがたく感じています。

 

珠の粒が大きくゴールドの真珠になる

白蝶貝の魅力というのは、白だけでなく『ゴールドパール』と呼ばれる黄色っぽい真珠も採れて、最近ではそちらのほうが人気が高いです。
特に海外の方には大きなサイズが好まれますので、価格も良いですし、魅力的です。
アコヤ貝はピンク系やグレー系など、また違った色合いがあるので、日本人に合ったサイズ感ということもあり、近年では中国などの海外の方から人気が出ていまして、値段が高騰しています。
何層にも真珠層が巻くことによって、照りというか光が出るものですから、いろいろな巻き方をすることによって、いろいろな色がアコヤ貝でも出ます。
さっき言ったピンクだけではなく、白だったり薄い黄色とか、いろいろな色ができますので、それぞれの色の魅力があると思います。
今年が半円真珠の真珠成功から131年めになるんです。
令和6年は。
それだけの間、真珠養殖が伊勢志摩の地で育まれ、海からみなさんの力によって、生まれたというのが長年続いていますので、やはり海外の方からも『伊勢志摩は真珠の街』と、いうイメージを持っていただいていると思います。
現在伊勢志摩は、生産量でいうと全国3位なんですが、『一位は伊勢志摩でしょ』というイメージを持たれていると思います。
5ミリ以下の『ベビーパール』という真珠は、ほぼ伊勢市までしか作られていません。
小さいのにきれいな色を出すというのはやはり、長年の経験で生まれたたものでして、養殖屋さんも門外不出で、みなさんで持っている技術なので、ベビーパールという真珠は、そのようなイメージをみなさん持たれていると思います。

 

珠は代々受け渡していくもの。リフォームしながらお客様との関係を築く

大王埼灯台というのは昔から観光地として有名でして、昭和40年代〜50年代にかけては団体のバスの旅行客がたくさん来ていました。
今でも観光地としては、有名だと思います。
大王崎灯台に登ると、260度くらいの角度で海が見えるということで、水平線が丸くなっている状態を見ることができるので、みなさんそれを感嘆し、喜んで帰っていただいていると思っています。
小売の『真珠の店あらふら丸』は平成元年にオープンしましたので、今年で35年目となっています。
父の代からでもそうですし、私が帰ってきてからも、もう30年近くになりますので、その変遷は店の前で感じております。
お子さんだったりお孫さんだったりと、何代にも渡ってお付き合いしている方々も多いですし、リフォームという点では、時代に合った枠に変えたり、使わなくなったネックレスの糸替えをしたり金具を変えたり…そういった変化もありますので、代々受け渡していくイメージがあるかなと、もらったものだから色が変わったけど、何とかなりませんかとか、形見がわりというんでしょうか、いただいたものに対しての尊敬の念を持って使ってくださる方がとても多いな、と感じます。
ケースに店名があったり、連絡先が書いてあったり、保証書が入っていたり…そこへ連絡をいただけるのは、本当にありがたいことだなと思っています。

貝殻という唯一無二のもの、同じような色をしていても、模様が若干違っていたり。
自然なものなので、その良さをみなさんが感じてくださっているのかな、と思います。