三重テレビ『ゲンキみえ生き活きレポート』2024年2月4日

ふるさとの海で生きる「熊野市の女性漁師グループ」
地域初の女性漁師である田中りみさんが仲間を誘って女性漁師チームを結成!
獲れ立ての魚を加工し、アイディアと工夫で売れる商品を生み出しています。
地域の漁業を牽引し、次の世代へと繋げていきます。

午前5時。夜明け前の熊野灘。定置網の引き上げがはじまっています。
男性漁師にまじって働く女性がひとり。
熊野市二木島町出身の田中りみさん。
2018年に就労したこの地域初の女性漁師です。

田中さんは、2017年に
東京で飲食店を経営し、尾鷲市や熊野市で定置網漁を操業している株式会社ゲイトに入社しました。
漁師になったきっかけは、ゲイトの社長さんとの会話から!

「お父さんも、おじいちゃんも、お父さんの兄弟もみんな漁師で・・・。
小さい時から漁師になりたかった!
だけど、この地域の風習というか、言い伝えというか、女の子は漁船に乗せられないというのがあったのであきらめていました。
だから、二木島にある加工場で魚を捌く仕事をしていたんです。
社長に魚捌くの楽しいかと訊かれたので・・・楽しいけど、漁師をしたいですと話しました。
そうしたら社長が、漁協とかに問い合わせてくれて、
別に女の子でも漁師になっていいぞと言われて!!念願の漁師になりました!!」

順風満帆の船出でしたが、2020年初頭からはじまった新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、会社の直営飲食店はすべて閉店。
コロナ禍を転機に新たな挑戦へ・・・。
「ダメージが大きいのは想定していたのですが、お店を閉めるのがすごく早かった。
うわ、すごい!!と思っているうちに次はこれをしよう、あれをしようと、とんとん拍子に話が進み、
焦る間もなく、次のことを次のことをやり始めました。」

熊野市の女性漁師チームの1人、藪本やよいさんは
田中さんから「一緒に行こう!」と誘われたから、海に出ようと思ったんだって。

ここが、2019年にスタートした女性たちだけで操業している定置網の漁場。
女性漁師たちが操業するのは超小型の定置網。
通常の10分の1ほどの大きさで、女性でも扱いやすいように改良されています。

通常の漁だけでなく、子どもやファミリーを対象にした漁業体験会も実施しています。

「女の子の漁師を増やしたいという思いもありましたが、
地元にいる甥っ子も船に乗る機会や魚を食べる機会が少ないと知りました。
体験してもらえれば、子どもにも漁業に興味をもってもらえるのではと思ってはじめました。」と田中さん。

「大変ですが、子どもたちと一緒に網を揚げて魚をすくう時とか、
その魚を一緒に捌いたりする時が楽しいです。」と藪本さん。

二木島漁港にあるゲイトの水産加工場。
定置網で水揚げした魚の半分以上は市場に出荷しますが、残りはここで加工しています。
担当するのは女性漁師チームの3人。田中さんと藪本さんと奥西美紀さん。

今朝、水揚げした魚を捌いています。
「イトヒキアジやキントキダイ。
あと、アオアジやイサギの小さいのやメアジがあります。」

女性漁師チームのみなさんは、商品価値が低い魚、いわゆる未利用魚、低利用魚に注目!
調理しやすいように一工夫し、おいしい食べ方を提案。
ネット販売を中心に一般家庭に届けています。

「この地域の定置網には年間200種類の魚が入ります。
だけど、しっかりとした値段が付くのは7割程度しかなくて、
後は市場に水揚げしても高く買ってもらえない魚が多い。
せっかく天然で獲った魚が、養殖の魚の餌になったりするのが私には理解できなくて・・・。
違う方法で、もう少し美味しい食べ方ができるのではと思ってやっています。」と田中さん。

こちらがゲイトのみなさんが今、主力にしている商品。
実はこちら・・・コロナ禍で生まれた新商品、天然素材100%の無添加ペットフード!
なんと人が食べることも可能なんだって。

「ここによく、猫が遊びに来てて。
猫ってすごく敏感で新鮮なものしか食べないなどいろいろな話があって、
冷凍した魚と比べると、食いつきが全然ちがったので、これはいけると思い商品化しました。」

「こちらがペット用の商品、3種類ですね。
こちらがミンチで、こちらが魚まるごと入ったフレーク、こちらが3枚おろしのスティクです。
だんだん注文が増えてて、魚を獲ってくるより、売上げで考えたらペットフードの方が金額は大きくなっています!」

現在では年間7万パックを販売する主力商品へ・・・。
レトルトパックなので常温保存が可能!
非常食としても注目され、さらに可能性が広がりそうです。

「やりがいのある仕事だと思います。
自分が獲ってきた魚をみんなで食べたり、
新鮮なうちに届けられるのが良いかなと思います。」と田中さん。

「魚の加工とか漁に行ったりするのがすごく楽しいです。
何が網の中に入っているのか分からない楽しみとか
こうゆう風に魚を獲っているんだという勉強にもなります。」と奥西さん。

アイデアとチームワークでピンチを乗り越えてきた女性漁師チーム
これからも地域の漁業を牽引して次の世代へと繋げていってくれることでしょう。