FM三重『ウィークエンドカフェ』2024年2月3日放送

日本の三大観音の1つ、津観音。 古くから津の人たちに親しまれてきたお寺です。
今日は、 住職 岩鶴蜜伝(いわつるみつでん)さんがお客様です。
津観音が開山してから1300年になるお寺のことを伺います。

観音の節分は鬼押さえ。鬼門から鬼が出ないように鬼を抑えている

他の節分と違って、津観音の節分は「鬼抑え」と言われています。
津の町に鬼門という鬼が出てくる方角があり、そこにこのお寺の観音さんをお祭りし、鬼が出てこないように封じていると言われているから。
昔、鬼は風邪とかウイルスとか、疫病とか、そういった悪いことをする象徴でしたので、
鬼門から鬼が出てこないように、
いろんな方々の力を借りて押さえつけたというのが、鬼抑えと言われる所以なんですね。

それこそ昔は、鬼役という罪人を連れてきまして、境内で自由にして離してあげます。
それを侍役の人が真剣で追いかけ回して切り伏せるというリアル鬼ごっこみたいなことをして、奇祭というのかな、非常に珍しいお祭りとして、全国的に有名だったんです。
もう津の町が良くなるか悪くなるかは、このお祭りで決まる!というふうな感じで、昔は考えられてましたので、
多くの方が来ていただいて、鬼が出てこないように、みんなの力で押さえつけてもらうのが一番いいんじゃないかなと感じてます。

今は、本当に罪人さんを離して切り付けるなんてことはできないですので、
地元の商工会とか、いろんな若い方々、商店主さんに協力していただいて、津クィーンさんなんかも来ていただいて、
寸劇という形で舞台の上でチャンバラをし、その後にみんなで盛大に豆まきっていうのを行なっています。
コミカルな演技もありますので、楽しんでもらえればと思います。

城から見て北東にあるのが津観音。北東は丑寅の方角で鬼が出る方角

今でこそ1月1日が新年ですけど、昔は春が1年の始まりって言われたんですね。
この2月3日、そして翌日から春が始まるので
この時期に病気にならないようになど、1年間の無事を祈ったり、
あるいは、お祓いを受けると1年間無病息災でいれるというふうなのが昔からあったんです。
なのでこの時期にみんな盛大に豆まきを行って、悪いものの象徴の鬼を追い払うならわしがあったというふうに言われてますね。

津市の「津」って港を指す言葉なので、元々の津の発祥は港町なんですね。
西暦でいうと709年、1300年ぐらい前に、
港の漁師さんが漁をしてたら、観音さんの仏像が流れてきて、拾い上げてお祭りをしたっていうのが、お寺の発祥だと言われてます。

基本、鬼が出てくる方角「鬼門」は北東の方角なんです。
津市は昔、町の中心がお城だったので、お城から見て北東の方角にあるのがうちのお寺なんですね。
この北東の事を昔は「丑寅の方角」と言っていたんですけど、この牛、虎の方から出てくる生き物のことを総称して鬼と言います。
どんな鬼が出てくるかっていうと、鬼ってイメージすると角ってそんな大きくないですよね。
あれ、牛の角なんです。
鬼って「牛の角」に「虎のパンツ」を履いていると思うんです。
そういったものが出てこないように、悪いことしないように観音様の力で抑えつけて、
時には鬼が邪魔な観音様を盗みに来ても、お侍様が退治してこの津を守ってもらったというのが昔から伝わる伝説の一つですね。

内の鳩は津観音のシンボル。戦前から親しまれている

大門自体が、元々は繁華街として賑わった場所でした。
それこそ昔は、みんなここに来て、甘いもんを食べたり、洋服を買ったりなど買い物をして過ごしたっていうふうに聞きますし、
無くなってしまいましたけど、大門百貨店とか、百貨店もこの街にありました。
そういった思い出で、昔話を含めて、お孫さんとかひ孫さんを連れてきていただける方っていうのは多いですし、
今でも境内の鳩なんかはいろんな方々の思い出になっています。

昔に鳩に餌をあげた方が、今度は子どもを連れて来ていただけていますね。
うちのお寺のイメージキャラというとおかしいですけど、
一つシンボルとして「あの鳩のお寺さん」とかってよく言っていただけるので、
鳩は多分、それこそ戦前から親しまれてるうちのキャラなんじゃないかなと思います。

大きい変化としてアーケードを撤去しましたので、ちょうど観音橋の方からドーンとうちのお寺がよく見えるようになりました。
この辺は、いい意味で、お寺の屋根もよく見えるし、ライトアップすると綺麗だしということで好評を得てますし、
最近は本当に若い方にちらほらと出店していただけているので、また何か新しい形でこの辺が賑わうといいなと思っています。

実はうちのお寺は参拝者自体は、減ることもなくどちらかというと増えてるんです。
なので、大門町と言われるぐらいなので、門前町としてもう1回何か新しい形で発展をしていくことができるといいなと思うんです。

家がいないので、人々のお賽銭で成り立っているお寺。それが1300年続くのはすごい

来ていただいたらわかるのですが、非常にオープンなお寺なので、
それこそ年中無休でいつでも自由に境内に入って、本堂さんの目の前でお参りができます。
気が向いたら好きなように寄っていただいて、大門商店街で何か甘いもの食べたついでに寄るでもいいですし、
あと鳩に餌をあげに来るついでにお参りするでもいいですし。
他にも津祭りとか七夕とか、地域のいろんなお祭りはありますので、そのついでに寄っていただけるっていうのも
お寺の役割としてはいいかなと思ってますね。

檀家さんだからどうとか、私は全然違うお寺さんだからどうとかっていうのは関係なく、本当にいろんな方々来ていただけています。
津観音っていうのは、元々檀家さんがいらっしゃるようなお寺ではないんですね。
なので、本当に津の皆様の力で、このお寺はずっと成り立っています。
それこそいろんな文化財があり、五重塔も建っていますが、
これも本当に一つ一つが皆様方が寄付してくださった、お賽銭を投げ入れてくださった、そういった想いのもとで集約して成り立っています。
檀家さんがいないからみんなに割り振りを当てて寄付をもらってるとか、そんなことはないです。
だから非常に不思議なお寺です。

いろんな方々が気が向いた時に来ては、気が向いたときにお賽銭を投げ入れてもらって、お祈りを捧げていただいて、
でもそれが最終的にはこれだけ大きなお寺としてその1300年以上続いてきてるっていうのは、素晴らしいお寺なんでね。
今後は変わることなく、次の時代にバトンを渡していかなければならないというふうに感じています。

なんせ観音さんは観音さんでしょっていう感じで、外国人も含めたいろんな方々が
よりどころとして来てもらえるっていうのは、このお寺のいいとこかなと思っています。

境内に東からの風が吹く。 固く閉じていた梅のつぼみは ゆっくりとほころび始める