FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年2月16日放送

今回のお客様は、『御在所岳ロープウェイ』の企画広報部長であり、『NPO法人三重県自然環境保全センター』の理事長である、森豊さん。
御在所の魅力をたっぷりと伺います。

昭和52年、森さんの御在所での生活が始まりました。
当時、御在所岳には、日本カモシカセンターと御在所ユースホステルがありました。
森さんの仕事はカモシカの飼育とユースホステルの管理人。
山の上でいつもお客様をお迎えしていました。

130206_151257

■時代を先取りすぎた? 単科動物園の『日本カモシカセンター』

まずはカモシカを簡単にご紹介します(笑)
カモシカは牛の仲間で、縄張りがとてもきついです。
氷河期からいた動物で、姿や形が変わっていない・・・あまり進化をしていないんです。

我々人間は話すことでコミュニケーションをとりますが、カモシカは鳴かないんですね。
生まれて1年くらいまではヤギのように鳴いてお母さんを呼んだりするんですが、大人になると鳴きません。
どうやってコミュニケーションをとっているのかというと、眼の下にある眼下腺からハチミツのようなネバネバの分泌物を出し、木になすりつけたり岩にねじ込んだりして、自分の匂いをつけていく・・・いわゆるマーキングです。
それによって、自分がここで暮らしているよ、というのを他の個体に伝えている。
原始的なんです。

このカモシカの研究に特化したのが『日本カモシカセンター』だったわけです。

動物園でよくあるのは『総合動物園』。
ありとあらゆる動物を集めて、学術研究して、展示して、見ていただく。
これが昭和50年代までは主流でした。

その後、より特化したものがヒットしていく中、その走りのような感じで『カモシカセンター』を始めたんですね。
カモシカだけを学術研究してく動物園、いわゆる『単科動物園』というもので、ここから近いのは、愛知県の『日本モンキーセンター』。
うちも学ばせていただきましたが『世界サル類動物園』として、猿ばかり研究しているところです。

当時は『日本カモシカセンター』『モンキーセンター』、それから名張の『サンショウウオセンター』と、なかなか単科動物園は少なかったんですね。

諸外国からすると『単科動物園』というのは非常に的を射ている。

しかし、対象がカモシカということで、非常に地味だったんです。
カモシカの動物園に子どもさんたちが遊びに来てくれても、カモシカというのは朝10時~14時くらいまではうたた寝しているんです。
動かない。
動物園の営業時間には岩場の影にこっそり座ってうたた寝をしていて、牛の仲間ですから反芻します。
うたた寝しながらクッチャクッチャしているわけです、

というわけでそんな習性だから、お客さんが喜ばない。
怒りますよね。
「入園料払ってカモシカ見に来たのに、動かんやないか~!」って。
しかしこれが本来の動物の姿ですからねぇ。

最近になってようやく、旭川の『旭山動物園』のように、その動物の生息しうる環境を見てもらうのが動物園なんだと認められてきたんです。
横浜の『ズーラシア』も同じで、行っても動物になかなか会えないことが多いですね。
これはこれで今、理解が出てきているので、ヒットしています。

『日本カモシカセンター』は、時代を先に行き過ぎたのかな(苦笑)

今、御在所岳には、4つのカモシカファミリーがいるので、ロープウェイに乗って見つけてくださいね。
13-2-16-2


■ロープウェイは鉄道! 山頂まで来たら春夏秋冬の楽しさが!

今、『鉄道』が子どもから大人まで大ブームで、女性にも大人気ですよね。
ロープウェイも、実は鉄道なんですよ。
鉄道事業法という国土交通省の管轄で、電車と同じ扱いなんです。

だから始発から終電まで、時間が決まっていれば、絶えず動かしていないといけない。
天気が悪くて誰も来ないような日でも、止めとくわけにいかないんです。
ホームに誰もいなくても電車は運行するでしょ、それと同じ事なんですよ。

だから冬は朝9時から16時、夏は17時までは、絶えずグルグル回っています。

『御在所ロープウェイ』は、昭和34年4月29日に開通した、当時は世界一のロープウェイでした。
現在でもトータル的には日本一ではないかと言われる規模です。
麓に『湯の山温泉駅』、山上は『山上公園駅』、と『駅』があるのは、鉄道だからなんですよ。

最近、ロープウェイで山頂まで上がってくる方々は、単なる観光ではなく、何らかの体験を求めているのを感じますね。
たとえば冬は、氷点下に身を置いてみたり。
冷たくて鼻が痛くて大変だし、山で風が吹くと体感温度が1度下がるというのも実感できます。
そういう体験から、来た方々は何かを掴んでいるはずです。
そういった体験のお手伝いしたりエッセンスだけでも紹介していくというのが、『NPO法人三重県自然環境保全センター』が開催している『ございしょ自然学校』の役割じゃないかな、と思います。
13-2-16-3


■季節が移り変わっていくのが素敵

春夏秋冬、日本には四季があるので、いらした諸外国のみなさんはびっくりしますね。

でも、もっと我々日本人が気づかなきゃならないのが、季節が移り変わる過程。
春だ夏だと区切らずに、春から夏に変わっていく、夏から秋、秋から冬、そして冬から春・・・この変わっていくというところが日本の自然の面白いところなんです。
春に花が咲き、秋に紅葉する・・・その現象ももちろんいいのだけど、それが移り変わっていくところが、『いとをかし』なんですね(笑)

これは御在所にずっと暮らしてきたからこそできる見方かもしれませんね。
風や太陽の位置・・・そういうのにも違いがある。

観光的な視野で見たら、中途半端な時期は面白くない、と感じるかもしれませんが、ちょっとそういったところに目を落としていただきたいです。

僕が一番好きなのは、冬から春。
昔は雪が2m70cmくらい積り、マイナス16度を記録するほどの極寒の地。
そんな御在所が、やがて春になっていく。
物理的に見ると、雪が溶けると水になるんですが、我々からすると雪が溶けると春になる・・・まさにその現象ですね。


13-2-16-4
■太平洋・琵琶湖・富士山が見えるのに、日本海は見えそうで見えない!

御在所岳は高さ1200mあり、滋賀県との県境にあります。
山頂に登ると琵琶湖も見えますし、日本海まで約80km。
振り返ると神島が見え、太平洋まで約80km。
日本海と太平洋の、ちょうど真ん中の位置にあるんですね。

日本一の琵琶湖を見て、230km先にある、日本一の富士山までもキャッチし。
こんなところはほかに御在(ござい)ません(笑)。
しかし標高1200mの御在所岳からは、は日本海だけが見えないんです。
75km先に敦賀湾があるのですが、彦根から竹生島までは見えている。
その先の敦賀湾さえ見えたら、日本海・太平洋・琵琶湖・富士山をキャッチできる場所になるんですが・・・。

以前、空気が澄む秋冬に、日本海をキャッチしようという『チャレンジビュー日本海』というイベントを開催しました。
その時に測量をしたりコンピュータで計算したところ、御在所から見えているのは、越前岬の沖合8kmだということが判明したんです。
なんと118km先。
見えているのだけど、遠すぎて霞んでしまっている。
しかも75km先の敦賀湾を越えてしまっていたんです。
で、コンピュータの計算によると、御在所岳があと160m高かったら敦賀湾が見えると。
しかし、160mの塔を立てようと思ったら大変ですよ。
ロープウェイの一番高い所でも61mですから。

ところがこの話にはまだ続きがあるんです。
宇宙が帰ってきた人たちが言うには、地球は完全な球ではないと。
ということは、コンピュータは完全な球として計算しているので、誤差があり、実際は見えているんじゃないかと。
そして、もしかしたら向こうからは御在所岳が見えるんじゃないかと、敦賀市に隊員を派遣したところ、敦賀市内にある標高360mの『あそうの丘』というものが御在所岳から見えていると判明。
それさえなければ、敦賀湾が手に取るように見えるんですって。

結局、それがあるがために160mの塔を立てなければならない、ということがわかったんです。
悔しいですね(笑)