FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年5月14日放送

今回のお客様は『魚匠 海人』の橋倉太一さん。
紀伊長島で揚がった魚を中心に、ホテルや旅館、居酒屋、レストラン、そしてご家庭に新鮮な魚を届けてくれます。
前回、カフェにお越し頂いたときは、海人をやり始めて間もないころ。
幼馴染みの竹谷さんと2人でスタートさせました。
あれから6年、海人のモットーを大切に毎日頑張っています。

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客様目線での商売を忘れることなくやっている

今年で『海人』をはじめて6年目。
6年やってきた中で気づいたのは、紀北町紀伊長島の町も好きだし、なんだかんだ言っても魚が好きなこと。
人とのやり取りも好きで、やっと自分が人の役に立てるようになってきたかな、と最近思います。

ありがたいことに年々お客さんが倍々で増えていっています。
「おごらず謙虚に」・・・それだけはきっちりと守ってきたつもりです。
それがあってお客さんが増えたということは、自分の実績として良かったし、頑張ったと言っても良いのかなと思います。
魚屋をしていると、「幼馴染みと2人でがんばっている『海人』があるって聞いたよ」というお問い合わせをいただいたり。
そういうのも含めて、魚を扱ういろいろな業者さんとの付き合いがあり、ホテルや旅館など大型のところや、割烹料理屋や居酒屋、弁当屋さん、スーパーなどにも納めています。

現在は『道の駅まんぼう』さんから、「元気なお前らが、せっかく朝早くからこの田舎に来てくれたお客さんのために安く美味しいものを提供できるということは町に貢献できるのではないか」と言われ、ボランティアではありませんが、
利益重視ではなく、町のために店舗を出しています。
そういう意味では、一般のお客さんの知り合いが増えたましたね。
僕は特に、おじいちゃんおばあちゃんや子どもが好きなんで、そういう人たちが多い日は、確実に儲かりません。
プレゼントしちゃうんで(笑)。
まあそれはそれでええのかなと。
来てくれて良かったということと、海人が扱っている魚が美味しいと言ってくれたら、商売はその次でも良いかもしれないですね。

 

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なじみの共同経営者、竹谷さんとの絆

彼とは、生まれてからと言っていいくらいの付き合いです。
今は、ある程度解消できましたが、ビジネスとして2人でやっていくということは、プライベートで遊んでいたのとはかなり違う部分がありました。
ビジネスとなったらお金がかかってくる分、お客さんのことも考えないといけないし、意見が割れることももちろんありました。
やっぱり2人なんで、ケンカしても気まずいし、仲良さすぎても気持ち悪いし。
とにかく自分たちのことより、お客さん第一でやっていこうと考えてきました。
毎日いっしょにいるわけですから、話はしますが、仕事が忙しくなってきたので、2人でご飯を食べながら話す・・・という機会はあまりありませんね。

僕らにとってありがたいのが、以前出演した、このラジオ番組なんです。
ラジオのCDを今でも時々車で聞いたりするんですけど、懐かしいのと、知識が増えた今からだと、恥ずかしいことを言っているなと感じたり。
相方とのやりとりを聞いていると、改めて絆を感じたりもします。
1回目にこの番組に出演した時は、まだ立ち上げたばかりで営業からスタートし、なんとかご飯を食べていけるかな、という時期でした。
お客さんもまだ少ないから魚も買えないし、家族もいるし、このままでええのかなあという不安要素もあった。
そういう時期でも、後ろを振り向かず、前を向いていこうとして、あっという間の5年間でした。
知らないうちに、いろいろな人が勉強させてくれたんだなと、今あらためて振り返ると思いますね。

 

売だけでなく町のことも考えるようになった

魚は鮮度が命なのに、当時は軽トラより一回り大きいだけの車しかありませんでした。
今は保冷車やお客さんに良い状態で届けるための設備もあります。
天気が悪くて魚が揚がらない日が続いても大きな水槽を持つことにより、事前に確保できるようになっています。

あの時の保冷車じゃなくて氷だけで、新鮮な魚のはずが、お客さんのところに届く頃にはグダグダになってたのを、目をつぶって買っていてくれたんじゃないかな、と思うんです。
お客さんに対しても今となっては恩に感じるし、ありがたかったと思います。
本当に支えられていたんだな、と。

僕らは最近中堅どころと言われますが、紀伊長島紀北町だけでなく、水産業自体が高齢化しているのが現実問題。
漁師さんにせよ魚屋さんにせよ、高齢問題は跡継ぎ問題なんですね。
僕らはみなさんにいろいろ勉強させてもらったので、今度は僕らが間に入って、たくさん魚を買ったり、地元のものを外に発信していくことで、そういう問題を少しでも解消していけたらなと思います。
やっぱり扱っている量が前とは全然違うので、やる以上は商売だけでなくて町のために、人のためにを考えるようになりました。
今まではそういうタイプじゃなかったんですけど。
人生も中堅どころなんですかね(笑)。

 

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ンケンの日帰りカツオが最高

鯛や平目や、今、脂が乗って美味しいのは石鯛。
これからはカツオ船。
水温が高くなってくることによって、カツオが沿岸付近で釣れるようになってくるんです。
そうなると紀伊長島や尾鷲の漁師さんは、近い場所で経費をかけずに釣ることができる。
で、近い場所だと、より新鮮な状態でお客さんに提供できる。
これからはケンケン漁の日帰りカツオがメインになってきます。
そういう良い物を、これからもどんどん他の地域の方にも使ってもらえたらなと思います。
最近お客さんの幅も増えまして、三重県庁さんとのコラボで、ミシュランに掲載されているような東京のお客さんに、三重県のお魚を提供したり、北は北海道から南は沖縄まで、いろいろな所にお客さんがいます。
また、地域によってニーズが違うんですよ。
鯛を好む地域と好まない地域があったり、石鯛がものすごく高くても買ってくれる地域もあったり。
またイベント事として使うような魚もあるので、面白いです。
日々勉強です。
本当は付き合いさせてもらっているお客さんのお店にも足を運びたいのですが、なかなか。
正直、2人での限界を感じています。
人を増やして、もっともっと多くのお客さんに僕らが扱っている魚を使ってもらうようにするか・・・今、ちょうど判断する時期なんだと思うんですよ。
でも、40になってくると、いつまでもしんどい仕事ができないと思いますし、仕事の形が変わってくるかもしれません。
お客さんを増やすのは良いのですが、2人という体制で、あまり増やしすぎても、逆にお客さんに迷惑をかけることになるのなら、すべきではないと思いますし、自分たちのできる上限を考えながらやっていきます。

おごらず謙虚に、お客さん目線で。
一緒に仕事をするのも腐れ縁だと思うので、仲良くしながら。
ちょっとでも、地域に役に立てる2人になれたら良いなあと思いますね。